さる9月に中国で、日本政府による尖閣諸島国有化に反発し抗議する大規模デモが起きてから、日本に来る中国人観光客は激減した。同様に、中国に行く日本人観光客も大きく減ったと言われている。

 だが、筆者はそのさなかの10月に上海へ2回出張したが、意外にも上海への2往復の飛行機はいずれもビジネス客でほぼ満席だった。

抗日ドラマで植え付けられる反日感情

 近年、中国では、日本の政治家による靖国神社参拝や領土領海を巡る紛争で反日デモが多発している。今回のデモでは、暴徒化したデモ参加者によって、中国に進出している日系スーパーや工場、レストランなどが多数破壊された。

 日本では、中国での反日デモの原因について、中国政府が進める「反日教育」によるところが大きいという指摘がよく聞かれる。

 しかし、40年前ならいざ知らず、今の学校教育の中でいくら反日教育を行っても、若者を洗脳することは難しい。なぜならば、40年前の中国では、若者は学校教育以外に情報を入手することができなかった。だが、今の中国では、学校でどんな教育が行われようと、インターネットでいくらでも異なる情報を手に入れることができる。開放された現在の中国では、学校教育で若者を洗脳することができなくなったのである。

 その代わり、現在大きな影響力を持っているのがテレビである。筆者は中国に出張するたびに、テレビで抗日戦争に関連する連続ドラマが多数放映されていることに驚く。

 40年前の中国では、国が製作した抗日戦争の映画が何本かあったが、映画の質が悪く風刺映画に近い低レベルのものだった。だが、現在、中国で製作されている抗日戦争の映画は質量ともにレベルの高いものが多い。戦後の歴史をほとんど知らない若年層の中国人は、こうした抗日戦争の映画を毎日見続ける結果、日本について反感を抱くようになる。