カツオを食べる達人だった日本の漁師

進化を遂げる「カツオ食」(前篇)

2012.09.21(Fri)漆原 次郎

 ところが、現代になるとカツオの食べ方が変わってくる。それをひと言で表すと、「食べない部分が多くなった」となる。

 カツオの部位を、赤身の普通肉、血合肉、頭や内臓などの3つに分けたとき、それぞれの重量比は約4割、1割、5割ずつとなる。このうち食用としての優先順位が高いのは普通肉の部分だ。一方、その他の部位はカツオの赤身を加工する段階で排出され、人が食べることも少なくなった。つまり、獲れたカツオの4割の部分しか食用に利用していないのである。背景には、カツオ漁の大規模化や遠洋化がありそうだ。

 大型の遠洋船でカツオ漁に出て、カツオを大量に獲る。そしてそれを船内で冷凍にしておけば鮮度を保ったまま長期間にわたり漁業航海を続けることができる。その間、船内では、カツオの頭や内臓や血合の部分を取り除き「ロイン」とよばれる四つ割のブロック肉に加工しておく。この冷凍カツオのロイン加工では、加工者は電動ノコギリを使うが、その「削り粉」には、骨、血合、皮などのさまざまな部位が混ざってしまう。そのため、削り粉は、飼料や肥料として使うくらいしか術がないのだ。

 また、小規模な漁の場合ならまだしも、大量に獲れたカツオの頭や血合を漁師がすべて食べ切れるかといったら、そうもいかないだろう。こうして、カツオの部位の4割は食用、6割は非食用という比率が出来上がってしまった。この比率を改める方法はないのだろうか。

 「私たちは、飼料や肥料にしかしていなかったカツオの部位を、食用にするための研究開発に取り組んできたのです」

静岡県立水産技術研究所開発加工科上席研究員の平塚聖一さん。博士(食品栄養科学)。農林水産省で食品分析などをしていたが、「現場が好き」という思いから、1989年より静岡県立水産技術研究所勤務に。

 こう話すのは、静岡県水産技術研究所開発加工科の平塚聖一さんだ。日本最大の冷凍カツオ水揚地の焼津市にある同研究所は、2009年から2011年まで「カツオ丸ごと食用化プロジェクト」に取り組み、食用として未利用だったカツオの部位を食材に加工する技術の開発を目指してきた。

 カツオの部位の6割が食用に使われていないというのは、単純にもったいない話だ。平塚さんもその点は認める。「食料自給率を上げようとか、捨てるのはもったいないというのは確かにそうです」

 だが、平塚さんは「しかし」と続けた。「このプロジェクトにはもっと大きな目標があったのです」

 その目標とは何だったのか。後篇で、現代のカツオ食の開発への挑戦を紹介することにしたい。

(後篇へつづく)

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