中国について極めて冷静な分析をしてくれている宮家邦彦さんがいつになく手厳しい。行間から「怒」の文字がにじみ出てくるようだ。「『日章旗』強奪事件が『極めて遺憾』な理由」の記事で、北京の日本大使館の対応がまずいと言うのである。
日章旗強奪事件、「丹羽大使は日本国民に謝罪すべし」
「北京の日本大使館関係者には申し訳ないが、筆者は、この日本大使の『極めて遺憾』の中には日本国民に対する『ごめんなさい』の意味も含めるべきだと考えている」
丹羽宇一郎大使が乗っていた大使公用車から日章旗が奪われた事件で、大使が「遺憾の意」を表明したことに対して、中国に対して「けしからん」と抗議するだけでなく、日本国民に対しても謝りなさいと言う。
北京の日本大使館が強奪された国旗の返却要求をなぜしないのか。
大使公用車に付けられた日章旗は車の付属物ではなく日本国の象徴である。それが蹂躙されたのに何の痛痒も感じないようでは「国家を代表する資格などない」ときっぱり。
宮家さんによると、過去、中国で反日デモが盛り上がっていた時期には、大使の公用車は日の丸を外して走行していたことがあるという。万が一の事故を避けるためだ。
今回の事件では、もちろん不届きなのは犯人である。しかし、中国は世界第2位の経済大国になったとはいえ思慮分別のある「大人の国」ではない。
問題が自分たちの中にあっても他人のせいにして騒ぎ立てる子供の集団である。そうした集団を相手にする際、不慮の事故を避け日中間の政治問題化させないことも大使の仕事ではないか、と宮家さんは言うのである。
産経新聞の古森義久さんが「商社マンの丹羽宇一郎氏を中国大使にしてはいけなかった」で問題提起しているように、丹羽大使の個性とは全く別に、商人に外交を任せるのは根本的な間違いだったのだろう。
商社マンに限らず経団連に加盟する企業のトップの発言を聞いていても、頭の中にあるのは目の前の商売だけというケースが多い。ますます難しくなる日中関係にとっては単なる雑音を超えて害を及ぼす危険性がある。