韓国の李明博大統領の竹島訪問は、わが国による竹島の領有権の国際司法裁判所への日韓共同付託の提案に発展した。韓国側はこれを拒否することを明言しており、日本の単独提訴となった場合、裁判そのものが成立しないことになる。
それが分かっていて、なぜわが国が単独でも提訴するのかといえば、それによって日本の竹島領有権を巡る主張の正当性を国際社会へアピールできるからである。韓国が裁判を避けるのは、日本と法的に争って勝ち目がないからだ、という認識が広がれば、そこから受ける韓国のダメージは大きい。
わが国は1954年と62年の2回にわたり、韓国に対して竹島の領有権につき国際司法裁判所への付託を提案したが、韓国はこれに応じなかった。日本はこのとき、単独提訴まで踏み込むことはしなかった。以後、今日に至るまでの50年間の長きにわたり、わが国は竹島の領有権を主張しつつも、国際司法裁判所への共同付託を提案してこなかった。
「竹島密約」は反故にされたのか?
65年、日韓基本条約が締結され、両国はようやく国交を樹立した。この条約の最大の難関はやはり竹島問題だった。
竹島問題はいかに日韓両国間で回避されたか、という点に関し、「竹島密約」の存在が指摘されてきた。65年1月、条約締結に先立ち河野一郎国務大臣(当時)と丁一権大韓民国国務総理(当時)との間で、竹島問題に関し、「解決せざるをもって解決したと見なす。したがって条約では触れない。」とする「密約」である。つまり日韓双方が竹島の領有権を主張したまま、現状(韓国の実効支配)を認め、領土問題を「棚上げ」するというものだ。
この「竹島密約」につき、鈴木宗男議員が2007年3月に、「竹島密約」の存在を報じた韓国の月刊誌記事を根拠として、外務省にその存在の有無を質問している。これに対する答弁は、「我が国としては、大韓民国による竹島の不法占拠は、竹島の領有権に関する我が国の立場に照らし受け入れられるものではないとの立場に基づき、竹島の領有権の問題の平和的な解決を図るため、従来より外交努力を不断に行ってきているところであり、このような我が国の立場に反する約束を両国間で秘密裡に行うようなことは当然認められず、御指摘の『密約』が我が国と大韓民国との間で行われたとの事実はない」というものであった。