終戦記念日の8月15日を前後し、日本の「領土問題」を巡ってまたしても摩擦が発生している。1つは尖閣諸島への香港活動家の上陸、もう1つは韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領の竹島への上陸・視察である。

 前者は、石原慎太郎都知事が推進する島の東京都購入計画に刺激された面があるが、中国側、韓国側の今回の振る舞いは、相手側の言い分や国民感情をまったく無視した乱暴なもので、問題解決への前進をいささかでも進めるものとはならない。

 実際、中国と韓国の今回の行動は、国際社会の支持を広めるものとはならなかった(筆者は、「世界華人保釣連盟」を名乗る香港や台湾の人士による尖閣諸島への画策を、あえて「国としての動き」と位置づける。この運動が中国政府や一部の共産党幹部たちの暗黙の了解と支持を受けていることを、中国において関係者から確認したからだ)。

 両国が、尖閣諸島や竹島とは関係のない「歴史問題への反省」を持ち出しても、南シナ海等で中国の強引な領土・海洋権益拡大の動きに直面している東南アジア諸国には、「またしても無理押しをしている」としか受け取られない。

 また、日本による国際司法裁判所提訴を招いた李明博大統領の行動は、「提訴を受け入れない」(国際司法裁の本審理は当事国すべてが実施に合意しないと行われない)と韓国政府が表明したとしても、「提訴を受け入れない理由の弁明」が求められることとなり、堂々と国際社会の審判を得ようという日本の姿勢や立場との違いが鮮明となる。

 いすれにしろ、主張の違いがあっても、紛争は平和的解決へ努力することが国連憲章の原則である。中韓両国の一連の姿勢はこれとは相いれないことが国際社会では明白となっている。

「北方四島は一度もロシア領になったことはない」と認める

 ひるがえって中韓両国の行動から我々が学ぶべきことの1つとして、紛争にかかわる相手国の論点をよく研究して、事に対処すべきであるということがある。

 領土や国境線を巡る紛争の解決には、自国内の世論も重要な要素である一方、相手国の世論をもある程度納得させる論や措置の構築と提案が重要だ。もしも相手国内に、こちら側の主張に一部でも味方する議論があるとすれば、その論旨をよく研究し、分析すべきである。自分の国で組み立てた議論を相手にぶつけるだけでは、だめなのだ。

 実は北方領土問題を巡って、ロシア(旧ソ連)には、日本側の「四島返還論」を正当なものとして自国の記録資料からあとづける議論が存在した。