蘇州にいる友人から突然メールが届いた。先週末現地で行われた反日デモの中に面白いスローガンを見つけたという。中国語では「钓鱼岛是中国的、苍井空是世界的(釣魚島は中国のもの、蒼井そらは世界のもの)」という。ここでニヤッと笑える人はかなりの中国通だ。

「あおいそら」って何だ?

「钓鱼岛是中国的、苍井空是世界的」を掲げるデモの参加者

 「钓鱼岛是中国的、苍井空是世界的」は今や中国で全国的に有名な言葉だ。メールをくれた友人はこのコピーを「なかなかセンスのある文句だと思い笑えた」と書いている。

 筆者も全く同感だ。中国若者にこれほどユーモアのセンスが育っているとは正直思わなかった。

 東京にいる中国人の友人に見せたら、「これは冗談で、何の意味もない」とばっさり切り捨てられた。

 だが蘇州の友人が勤める日系企業の中国人従業員や中国語学校の教師は、男女を問わず、皆この言葉を知っている。何でも、今年の春あたりから流行っているらしい。

 一定年齢以上で、「蒼井そら」嬢のことをあまりよくご存じない方々はこちらをご覧頂きたい。2002年に日本でグラビアとAVデビューを飾った彼女は、今や中国の若い男性の間で最も有名な日本人女性の一人なのだそうだ。

 中国政府が彼女を見る目は厳しい。それでも彼女は「老師」と呼ばれ、北京のイベントで中国大物歌手・女優らと共演するほどの人気者だ。中国でポルノ一掃が叫ばれる中、彼女のAV作品を密かに収集する中国人男性も決して少なくないという。

 それにしても、あの中国で、しかも反日デモのスローガンが、尖閣問題と日本のセクシー女優を組み合わせるとは思いもよらなかった。「尖閣は中国のもの」と主張するのは仕方ないが、「蒼井そらも中国のもの」と言わず、「世界のもの」とするところは、実に凄いコピーだと思う。

 あの中国版「2チャンネル」でも、このスローガンは結構受けている。曰く、「なんか一応ユーモア分かってんじゃんw、やっぱり中国は嫌いにはなれんなw、中国のお前らw こういうセンスは嫌いじゃないw」といった具合。恐らく日本人による書き込みだろう。

 とにかく、20年前の中国ではまず考えられない現象だ。さらに、筆者が北京に在勤していた10年前の中国ですら、こんな「しゃれた」スローガンを創作する文化的、精神的余裕はなかったと思う。中国社会が驚くほどのスピードで多元化していることを実感せざるを得ない。