「コンクリートから人へ」「政官業の癒着一掃を」──2009年の総選挙で国民から圧倒的な多数で支持を得た民主党政権が掲げた看板が、早くも色あせている。

 各種業界団体との接点を確保するため、党内に次々と議連が誕生しているほか、2010年度の予算でも民主党に友好的な団体に対する手厚い配分が目立っている。民主党が「第2の自民党」になりつつある現状を見る。(敬称略)

雨後のタケノコの議連

武藤敏郎氏/前田せいめい撮影野党時代の民主党が日銀総裁就任を拒否した武藤敏郎大和総研理事長を、議連発足のゲストスピーカーに招待
(撮影:前田せいめい)

 医療、介護、トラック、建設業法、港湾、観光、情報通信、司法書士・・・。2010年に入ってから、民主党内に次々と議員連盟が発足している。3月末に発足した「デフレから脱却し景気回復を目指す議員連盟」は「財政・金融を分離する上で財務省OBは不適格」として、2008年3月に野党だった民主党が日本銀行総裁への昇格を拒否した大和総研理事長の武藤敏郎をゲストスピーカーに呼ぶ無定見ぶりも見せた。

 議連が雨後のタケノコのように乱立しているのは、幹事長の小沢一郎の指導が背景にある。小沢が2009年11月に出した指針は「原則として民主党単独で活動することとし、超党派議連は幹事長室と協議する」などの方針が示されており、今まで自民党を窓口にしていた業界・団体と民主党とのパイプを作ることで党勢拡大に繋げたいとの思惑が見え見えだ。

 また、各種議連が幹事長室のコントロール下に置かれている点も見逃せない。自民党政権の時代には若手・中堅の有志が派閥横断的に議連を発足させることがあったが、現在の民主党では議連を発足した場合、目的や構成員などを幹事長室に報告しなければならない。

 さらに、「族議員の跳梁跋扈を防ぐため、政策決定を政府に一元化する」という方針の下、議員立法も制限されている。議連での研究・検討の成果を法律として実現しようにも、実質的には幹事長室の意向次第ということになる。

自治体や業界団体に睨みを利かせる。幹事長室が民主党の権力中枢だ

 このため、自由闊達に政策を討議する雰囲気は見られず、むしろ多くの議連は業界団体との接点づくりに力点が置かれている。

 自治体や業界団体の政府に対する要望活動の窓口が民主党幹事長室に一元化されていることも問題だ。2009年秋に示した新ルールによると、自治体首長や地方議員の要望は県連や地元選出議員が受け、そこから幹事長室に伝わる仕組みだ。

 わざわざ上京して役所を回る機会を減らす「分権型陳情システム」と言えば、聞こえはいい。しかし実際は、政府に対する要望が全て小沢を通る仕掛けがそこにある。小沢の脇を固める副幹事長から「民主党を支持しているのか?」「自民党寄りなのではないか?」などと詰め寄られた首長も少なくない。結果的に新システムは、幹事長室が自治体や業界に睨みを利かせる手段として使われているのだ。

予算配分でも差別

身に覚えはある?歯科医が最も不愉快に感じる患者の行為

歯科の診療報酬アップは、日本歯科医師会がいちはやく民主党支持を表明したから?〔AFPBB News

 既に2010年度予算を見ても、民主党支持を標榜した団体に対して予算配分を手厚くする一方、自民党系団体に冷たい対応を取っている傾向が見て取れる。

 最も露骨だったのは医療機関に支払われる診療報酬。歯科医師会が民主支持をいち早く決めたのを受けて、診療報酬本体の上げ幅1.55%に比べると、歯科は2.09%と優遇された。逆に、会長選挙を控えて支持政党を一本化できなかった開業医を中心とする日本医師会は、割りを喰った格好だ。

 しかも、従来ならば診療報酬の詳細な配分割合は中央社会保険医療協議会(中医協)で決まるのに、歯科への手厚い配分については、小沢が昨年末に提出した政府に対する予算要望書で盛り込まれていた。