ガイトナー米財務長官、中国に内需拡大へ転換求める

釜山G20で戦闘姿勢を鮮明にしたガイトナー米財務長官(参考写真)〔AFPBB News

 会議後の記者会見で登壇すると、ガイトナー米財務長官は左右両サイドから伸びたマイクを両手で握り締め、ぐっと口元に引き寄せて戦闘的な姿勢で演説を始めた。

 2010年6月5日、韓国・釜山で開催された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議。海外のテレビニュースはガイトナー長官の険しい表情を映し出していた。

 日本ではちょうど政変のタイミングに重なり、菅直人財務相(当時)が出席できず、峰崎直樹副大臣が途中参加するという始末。マスコミもこの点ばかりを批判的に報道した。確かにコミュニケを読んでも大して面白いことが決まった会議でもなさそうだが、参加した関係者によると米国は欧州に対し攻撃的な姿勢を鮮明にしていたという。

「生贄」求めるポピュリズムに苦しむ米政府

 冒頭の記者会見だけでなく、今回のG20ではガイトナー長官の逸話に事欠かない。まず会議前に各国財務相に対し、(1)日欧などの経常黒字国は内需を拡大せよ (2)欧州はもっと金融システムを改革せよ――という趣旨の書簡を送り付けてきた。

ECB、政策金利1.0%に据え置き

トリシェECB総裁「もう講義は結構だよ」(参考写真)〔AFPBB News

 会議が始まると、ガイトナー長官はこうした内容に沿ってプレゼンテーションを散々行い、トリシェ欧州中央銀行(ECB)総裁が「もう講義は結構だよ」と野次を飛ばしたと伝えられる。

 こうした米国の姿勢の背景には、もちろん国内の政治事情がある。今秋の中間選挙では、与党民主党とりわけ現職議員の大苦戦が予想されている。国民の不満は一向に回復の強さを示さない経済・雇用情勢、そしてこの事態を招いた銀行に対する当局の対応に向けられている。

 国民は更なる「CHANGE」、いや「生贄」を求め始めた。その要求は(1)もっと銀行を規制して高給を払えないようにしろ (2)産業育成や個人消費拡大の責任を果たすべく貸し渋りを解消させろ――の2点に集約できる。かつて日本も経験した銀行叩きのポピュリズムである。そしてそれを打破できない政治的なリーダーシップの欠如も、また同じである。