2008年秋の金融恐慌後、日本半導体メーカーはすべて赤字に転落した。これをきっかけとして日本半導体業界に第2次再編が始まった。

 まず、産業再生法第1号適用を受けて公的資金が注入されたエルピーダメモリが台湾メモリーとの提携を発表した。また、経営破綻した米SpansionのNAND型フラッシュメモリ(NANDフラッシュ)に関するIP(Intellectual Property:設計資産)を買収した。

 さらに今年(2010年)4月1日、ルネサス テクノロジとNECエレクトロニクスが経営統合して、社員数4万7000人の巨大半導体メーカー、ルネサス エレクトロニクスが誕生することになった。

 果たして、このような再編の結果は吉と出るのか凶と出るのか?

 日本半導体は過剰技術で過剰品質を作っていることを再三述べてきた。だから、日本半導体は高コスト体質である。それゆえ、不況になると大赤字を計上する。

 その結果、弱体化し、1人では立っていられなくなり、弱った者同士がくっ付き合う(経営統合する)。その経営統合がうまくいかず、さらに弱体化・・・、という悪循環を繰り返しているのではないか?

 かつてプロイセン(現ドイツ)の鉄血宰相ビスマルクは、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言った。今、再編に直面している半導体メーカーは、過去の再編劇の歴史から多くを学び取り、同じ類の失敗を繰り返さない固い決意が必要だろう。

 そこで、今回と次回の2回にわたり、日本半導体の第1次再編を振り返り、その結果を分析する。ここから、第2次再編に役立つ教訓を引き出すことを試みたい。

失敗したと言わざるを得ない日本半導体の第1次再編

 第1次再編の結果はどうだったのか? 2000年前後、DRAM撤退後に起きた日本半導体の第1次再編を概観してみよう。

(1)1999年12月、NECと日立製作所がDRAM部門を分社化して統合し、エルピーダを設立した。

(2)2002年5月、NECがDRAM以外のLSI事業を分社化して、NECエレクトロニクスを設立した。

(3)2003年4月、日立製作所と三菱電機がシステムLSI事業を分社化して統合し、ルネサス テクノロジを設立した。

(4)2003年7月、米国AMDと富士通が、NOR型フラッシュメモリ(NORフラッシュ)の合弁会社、米Spansionを設立した。

(5)2008年3月、富士通がLSI事業を分社化して富士通マイクロエレクトロニクスを設立した。

 しかし、エルピーダは設立から2年間、DRAMシェアを落とし続けた。2002年11月に社長が交代しなければ、消滅したか、あるいはNECに吸収されていたに違いない。

 また、NECエレクトロニクスは設立直後から赤字に転落した。かつて世界一に君臨したこともある半導体売上高ランキングでは、世界10位から転落した。