アップルの社員はスティーブ・ジョブズの世界観を共有していた(写真:ロイター/アフロ)アップルの社員はスティーブ・ジョブズの世界観を共有していた(写真:ロイター/アフロ)

 売り上げと利益の最大化には「ブランド力」が欠かせない。ドイツのフェイラー、米国のエディー・バウアー、フランスのロクシタンなどの市場戦略を手がけた野本明氏がブランド創出の極意を数式を用いて解説する。(野本明:経営コンサルタント)

※この記事は、『利益を出すために重要な24の数式』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部抜粋・編集しました。

助成想起と純粋想起

 ブランドを測る指標として代表的なものがブランド認知度です。ただし、ブランド名がどれだけ認知されているかを追っても意味はありません。

 ブランドの本質、創業者の世界観が認知されていなければ、消費者との間にブランド力としての心の絆は生まれないからです。ブランドの本質の認知を広げるためにはその伝え方が最も大事なのです。

 認知度といっても調査方法には2通りあります。

 そのひとつで最もポピュラーなのが「助成想起」という方法です。これはブランド名を出して、そのブランドを知っているかを尋ねるものです。類似のものを含めていくつか見せるとその中での認知度の高さの順位もわかります。

 認知度を高める理由は、聞いたことのないブランドよりも知っているブランドの方が信頼度は高く、買ってくれる可能性が高いだろうということです。体感的には30%以下だと知る人ぞ知る状態、70%以上だとほとんどが知っている状態です。

 私が日本上陸に関わったブランドの場合、事業開始時は10%前後の認知度でしたが、数年後、全国展開したあとは70%台に近づいたということがありました。また別のブランドではすでに日本で浸透していた中で、男性はほとんど知らなかったのに、女性はほぼ全員知っていたということもありました。

 一方の「純粋想起」は、ブランドの属する業種や品種の中で知っているブランドを挙げてもらうもので、ノーヒントです。この場合は単に名前を「聞いたことがある」というより何か強い印象を持つ「知っている」状態と言えるでしょう。

 助成想起より競合の中で選択される優先順位が高いことは、この数値で確認できます。