── 客に気づかされ、教わることは多いですか。

佐藤 普通の中小企業は、大企業や大手メーカーの話ばかり聞くじゃん。えらい人の話だけ聞いて、それに習おうとする。そして、どんどん敷居を上げていって、いつの間にかマニアばかり相手にするようになる。ターゲットを絞って高く売ることが「生き残る術」だっていうわけだ。

 でも、我々は逆。ど素人のおばちゃん、ど素人の小学生から学ぶ。時にはおばちゃんから怒られるよ。あんた、分かってないわねえって。でも、ああ、なるほどなあって思うことがいっぱいある。我々はそうやって学んでいる。

── 「素人」を大切にしているんですね。

佐藤 小学生、高校生からおじいちゃん、おばあちゃんまで、「いろいろ教えてくれてありがとう。ここでカメラを買ってよかった」って言ってくれる。全然カメラのことなんて分からなかった人が感謝してくれる。そう言われると、こっちだってびっくりするよね。

 だから商売の真理はそこにあると思っている。これが新たなマーケットをつくることだと。

 カメラに詳しくて自分でなんでもできる人は、どこの店に行ったっていいんだよ。でも、カメラなんて全然分からなくて、使い方を知らない素人が世の中には8割も9割もいるわけだ。

 国内のカメラマーケットは衰退しているって言われるけど、見方を変えればそんなことはない。町に10万人の人が住んでいたら、その10万人全員がお客さんとして店に来たんですかっていう話だよ。10万人のうち1万人が来ているだけでしょ。残りの9万人は思い出をきれいに残してないじゃん、全然。

 この地域にはカメラのことをよく知らない人がまだまだたくさんいる。そういう人たち全員に思い出をきれいに残してもらいたい。それを考えたら、他の地域には出ていけないよね。

店内にはこうした手描きのポスターやPOPが張り巡らされている。