ヒット商品っていうのは、たいてい「ブランド」のおかげだからね。メーカーがテレビCMをばんばん流して大手家電量販店が重点的に売って、両者が結託して作り出しているのが、今の売れ筋商品。

 でも、テレビCMに乗る商品なんてごく一部だよ。それ以外が90%以上なんだ。我々はそれらの中から、操作のしやすさ、ホールディング、頑丈さ、レンズのコーティングなどを全部調べて、「思い出をきれいに残すためにはこれだよね」っていうカメラを探し出してくる。

 お客さんは、広告で目にするカメラしか知らない。だから最初は、なんでそんなカメラを押しつけようとするんだって思うよね。

 でも、調べていくと、実はすごくいいカメラだということが分かってくる。実際にお客さんが、本当にありがとうね、あんたのすすめてくれたカメラ、本当に良かったわあって言ってくるからね。今は、サトーカメラの方が全然ものが良くて安いじゃんと、みんな思ってくれている。

── 目利きの眼があると、埋もれている優れた商品を安く仕入れられるというわけですね。

佐藤 他の店もみんな真似して、うちで売っているのと同じ商品を仕入れて売ろうとするんだよ。でも、売れない。大手家電量販店では、誰もが知っている人気商品を置かないと売れない。だって、説明できる店員がいないんだから。結局、売れ残るよね。売れ残ったのはメーカーに返品されて、また、うちが安く買い取る。

おばちゃんや小学生からも学ぶ

── 徹底的に客の立場に立つと、売るべきものが見えてくる。

佐藤 商売を始めた時は、我々も客をよく見てなかった。売ったら終わりで、はいさよなら、はい次って感じで。効率を追求するのが世の中では正義だったからね。我々も知らないうちにそれをやってたんだ。

 なにしろここは激戦区だから。隣の店とケンカして、客を取った取られた、生きるか死ぬかの世界だから。生き残るのに必死でさ。自分のことしか考えてらんないって。

 でもある時、お客さんが、あんたのおかげよって言うんだよ。もう何年も前に初孫が生まれた時にうちでカメラを買って、それから写真が趣味になっちゃったおばあちゃんなんだけど。そのおばあちゃんが、あんたのとこでカメラを買ったおかげだよって言うんだよ。それまでの60年の人生より、あんたと出会ってからの毎日の方が人生の中でいちばん楽しかったって。

 「えー!?」と思ったよ。ちょっと待ってよ、そんなこと想像もしなかったよ、そこまで思ってくれてたのって。じゃあオレ、もうちょっと真面目にやろうっていう気になったよ。その時だよね、本当に気がついたのは。