企業や家庭で使う電気は、送電線を通じて発電所から一方的に送られている。だが、これを企業→電力会社、家庭→電力会社、家庭→家庭など双方向で電力をやりとりできる仕組みをつくったらどうだろう。各家庭や企業が個別に太陽光パネルや風車で発電し、電力が余れば必要なところに送ることができるようになれば、電気をもっと無駄なく効率的に使うことができるのではないか。
化石燃料を燃やして電気を起こす火力発電に代わり、太陽光や風力などの再生可能エネルギーが主流になれば、二酸化炭素の排出量が減って地球環境にも優しい。電力と通信が融合することで、新しい技術開発やビジネスチャンスも生まれる。つまりスマートグリッドとは、環境と経済に一石二鳥の効果を生み出す対策なのだ。
米オバマ政権はここに着目し、スマートグリッドをグリーンニューディール政策の柱に据えた。推進のために緊急経済対策の補助金から約34億米ドルを充てると発表したため、新たなビジネスチャンスだと関連業界は活気を帯びている。
通信網で電力消費データを把握
このスマートグリッドの実現に欠かせないのが、電力使用量のデータを集める「スマートメーター」だ。
あらかじめ10~100メートル程度の近距離通信機能を組み込んだ電力量計に、住宅内の照明、エアコン、テレビ、給湯器などの家電機器を接続する。するとこれらの機器の稼働状況が、電力計からネットワーク経由で電力会社にリアルタイムで送られる。
送られてくるデータを基に、電力会社は各家庭の家電機器の出力や温度を調整する。電力需要は昼夜、あるいは季節によっても変動するので、電力会社はこれまで送電に伴うエネルギー調整に苦慮していたが、これで使用量に応じた無駄のない送電が可能になる。
一方、ユーザーも電力量計の表示を見れば自宅で消費する電力量が随時把握できるため、自宅の太陽光パネルで発電した電力量をデータ化し、無線経由でほかの家庭や企業、あるいは電力事業者に売ることができる。