最近は、成熟した中国人客をどう振り向かせるかが、各社に共通する課題となっている。
某航空会社は目下、中国人材採用を増やしているが、従業員訓練を担当するD氏は「トレイのレイアウトは教えられても、顧客の気持ちを汲むことまでは教えられない」と言う。マニュアル化できない部分をいかに身につけさせるかが、大きな課題となっている。
また、中国の富裕層をターゲットに健康器具を売り込む中国人経営者も、同じ意識を持っていた。「中国人職員はどうしても文化的素養に欠けているという点は否めない。顧客対応のひどさに何度も冷や汗をかかされた」と話す。「その点、日本人のサービスは富裕層の間でも評判がいい。中国人が日本で買い物したいのはそのためでもある」とも。
「確かに中国人人材は外国語の習得能力には秀でているけれど・・・」と、冒頭で紹介したX社の人事担当者A氏。「欲しいのは英語力よりも接客力だ」とも語る。
アジアと欧米の両方の文化を理解している日本人
こうした状況は、実は日系企業にとって大きなチャンスである。
中国ビジネスに詳しい大阪のコンサルティング会社、サダ・インターナショナルのサダナオコ氏の持論は、「日本人の才能はアジアビジネスで強い武器になる。もっとその才能を活用すべし」というものだ。
「販売には、自分たちが売ろうとしている商品への情熱が不可欠です。日本人ほど情熱的に仕事や商品に打ち込めることのできる民族はいないでしょう。この情熱はなかなか他の民族に教えられるものではありません」
ファッション、デザイン、料理など様々なサービス業の分野で、アジアと欧米の両方の文化を理解し、しかも情熱を持って仕事に取り組める日本人こそが、中国のビジネスの現場で必要とされていると語る。
上海の大学で教鞭を執るF教授のコメントも心強い。「中国の高等教育の水準の高さは目を見張るべきものがある。だが、一人ひとりの資質という面では、日本の生徒にはかなわないと思っている」。あとは外国語能力さえ身につければ、というところか。
日本の若い人たちには、日本人の強みを生かしてどんどん中国にわたって頑張ってもらいたい。そこで得た収入を日本の消費に環流してくれれば、なおのこと喜ばしいと思う。