睡眠不足は、体にどのような悪影響を及ぼすのだろうか(過剰睡眠が体に良くない理由はまだよく分かっていない)。
まず睡眠不足は、交感神経を緊張させて高血圧になりやすくなる。またインスリンの分泌が減少し、血糖値が高くなり、糖尿病発症のリスクが高まる。
また、食欲を抑制し、脂肪を燃やし、代謝を亢進(こうしん)する働きを持つレプチンというホルモンが減少する。これによって食欲が増し、代謝や脂肪燃焼は減り、結果として肥満になる。
忙しい日が続いて睡眠不足になると太るというのは、こういう理由による。
年を取れば、熟睡感は減少する
今年7月、ニュージーランドのオークランド大学は、昼間動かない子供は寝つきが悪く肥満になる傾向があると米医学誌に発表した。写真はジョージ・ブッシュ大統領候補(当時)の横であくびをする少女〔AFPBB News〕
睡眠は加齢とともに変化していく。10代、20代では、寝つきがよく、また深い睡眠が取れ、爆睡することも少なくない。ところが、年齢を重ねるにつれて、寝つきが悪くなり、深い睡眠も少なくなる。
レム睡眠・ノンレム睡眠という視点から見ると、若い頃は睡眠の後半で多く出現していた浅い眠りのレム睡眠が、高齢になると眠り全体の中で平均化して現れる。つまり、深い眠りが減少するのだ。
結果として、夜中に何度も目が覚めたり、朝早くに目が覚めたり、熟睡感が減ったと感じるようになる。しかし、これは決して体調がおかしいとか睡眠障害というわけではなく、自然現象なのだ。「もっと眠れるのではないか」と不満に思う必要はない。
良い睡眠について、滋賀医科大学睡眠学講座の宮崎総一郎教授は、こう言っている。「良い睡眠とは、朝起きて疲れが残っていない、昼間に過度の眠気が起きてこないこと」