前回に引き続き、睡眠について考えよう。人間はどのくらい寝ないでいられるのだろうか。
1965年、米国カリフォルニア州・サンディエゴの高校生が、ギネスブックの不眠記録260時間に挑戦することを思い立ち、デメンツという睡眠学者が立ち会って不眠記録へ挑戦した。その結果、264時間12分、つまり11日間の不眠記録を打ち立てた。

睡眠不足時は、マイクロスリープを取る

「早起きは三文の損?」京都の研究者が新説を発表

「早起きは三文の損?」。京都の研究者が世界睡眠研究会議で早起きは心臓病になりやすいとの新説を発表した。このほか、米国の研究では睡眠不足が心臓病や心臓疾患につながるとのリポートを発表している。写真は資料写真〔AFPBB News

 ここで重要なことは、完璧に寝なかったということではなく、マイクロスリープという短い睡眠があったということだ。

 この高校生は眠気が限界を超えると、「目を休ませたい」と言ってほんの少し目をつぶり、その後は頭が少しクリアになったという。これが、数秒から10秒ほどのマイクロスリープと呼ばれるもので、短時間にもかかわらず、脳を休ませ、回復させる力がある。

 この実験でもう1つ重要なことがある。それは、11日間起きていて、その後何時間の睡眠で回復したかということだ。たったの14時間だった。

 つまり、睡眠というのは非常に効率が良いのだ。睡眠不足を短時間で補うことができる。睡眠不足が続く忙しいビジネスマンにとって、わずかな移動時間を利用しての短時間睡眠は、実に意味があるわけだ。

 逆に、寝だめはできない。長時間寝たからといって、その後、長時間起きていられるというわけではない。

睡眠不足は、高血圧、糖尿病、肥満のもと

 前回、適度な睡眠時間は、個々人によって異なると書いた。長く寝ないと調子がおかしくなるロングスリーパーもいるし、短い睡眠時間でも大丈夫なショートスリーパーもいる。それを踏まえたうえで、「睡眠時間と死亡率」という統計データを紹介しよう。

 この調査は、名古屋大大学院の玉腰暁子助教授らの共同研究グループが行ったもので、これによると、最も死亡率が低かったのは6.5~7.4時間。これを底として、グラフはU字型を描き、睡眠時間が短くても長くても死亡率は上昇していく。個々人の理想の睡眠時間は異なったとしても、平均7時間ほどが、健康には良いということを物語っているようだ。