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半導体の受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は、トランプ政権においても米国の「CHIPS・科学法」に基づく補助金の支給が続くとみている。一方、トランプ氏はかねて、台湾の半導体産業を非難しており、新政権の発足に伴いTSMCに対する補助金が打ち切られるのではないかとの観測も流れている。
こうした中、TSMCの幹部は補助金の継続を確信していると、米経済ニュース局のCNBCは報じている。TSMCの黄仁昭CFO(最高財務責任者)はCNBCとのインタビューで、「トランプ政権下でも資金提供は継続される見込みだ」と述べた。
「実際のところ、2024年10~12月に初期段階分を受け取っている」とも述べ、同社が総支給額の2割に相当する15億米ドル(約2300億円)を既に受け取ったことを明らかにした。
アリゾナ州への総投資額650億米ドル 米政府が1割助成
米国では2022年8月に半導体の生産や研究開発に527億米ドル(約8兆2300億円)の補助金を投じるCHIPS・科学法が成立した。同法はバイデン前政権の産業政策の中心と位置付けられ、国家安全保障と経済成長に不可欠なハイテク部品の国内生産を復活させるというものだった。
TSMCなどはこの補助金を受給することを前提に米国内工場の建設計画を立てた。2024年4月には、米西部アリゾナ州フェニックスに3つの先端半導体製造工場を建設するための支援として、米政府から66億米ドル(約1兆300億円)の補助金支給を約束された。
同社のアリゾナ州への総投資額は650億米ドル(約10兆1500億円)になる。その第1工場は既に完成しており、2024年10~12月に操業を開始した。残り2つの工場の建設も順調に進んでおり、黄氏は今回、第2工場が2028年に稼働開始する見込みだと説明した。
トランプ氏「台湾がアメリカの半導体産業を盗んでいる」
ただ、CNBCによれば、トランプ氏は大統領選挙期間中にCHIPS・科学法を公然と批判し、「代わりに関税が半導体製造を国内回帰させるためのより効果的な戦略だ」と主張していた。同氏は「台湾がアメリカの半導体産業を盗んでいる」とも述べていた。
トランプ氏と共和党主導の下院がCHIPS・科学法を再検討するかどうかについては議論が続いているとCNBCは報じている。
その一方で、業界の専門家らは、トランプ氏がこの政策をほとんどそのまま維持すると予想している。同法は共和・民主両党からの支持があるというのがその理由だという。
TSMC会長、米政府との良好な関係を強調
TSMCがこのほど発表した2024年10~12月期決算は、売上高が前年同期比38.8%増の8684億台湾ドル(約4兆1300億円)、純利益は57.0%増の3746億台湾ドル(約1兆7800億円)だった。AI(人工知能)向け半導体への強い需要を背景に、売上高・純利益ともに四半期ベースで過去最高を更新した。
魏哲家・董事長(会長)兼CEO(最高経営責任者)は決算説明会で、TSMCと米政府が「長年にわたる良好な関係」を築いていることや、同社が連邦・州・市レベルで受けている支援と協力を強調した。