(英エコノミスト誌 2022年6月24日号)

アラブの春、ジャスミン革命によってチュニジアの独裁政権は倒れた(2011年1月13日、写真:AP/アフロ)

食料・エネルギー価格の高騰がすでにある不平不満に追い打ちをかけている。

 人はパンのみにて生くるものにあらず、とイエスは言った。とはいえ、パンが不足すれば人は怒り出す。

 今日のような食料価格ショックに世界が前回苦しんだ時には、ほかの要因も相まって「アラブの春」と呼ばれる反乱の波が沸き起こり、4人の大統領がその座を追われ、シリアとリビアで身の毛もよだつような内戦が始まるに至った。

 不幸なことに、ウラジーミル・プーチンによるウクライナ侵攻のせいで、穀物とエネルギーの市場が再び大騒ぎになっている。

 このため、今年は騒乱の発生も避けられない。

生活を直撃するインフレ

 食料とエネルギーの価格高騰は、インフレの最も耐えがたい形態だ。

 家具やスマートフォンが値上がりすれば、購入を延期したり、なしで済ませたりすることができる。だが、人は食べるのをやめることはできない。

 同様に、輸送コストはあらゆる物品の価格に織り込まれており、職場に歩いて通うのは容易でない人が大半だ。

 従って、食料と燃料の価格が高騰すれば大抵、生活水準が急低下する。

 最も強い痛みを被るのは貧しい国の都市住民だ。所得の大きな部分がパンとバスの運賃に消えていくからだ。

 彼らは農村部の住民とは違い、自分で食べる作物を育てることはできない。だが、暴動を起こすことはできる。

 多くの国の政府がこの痛みを緩和したいと思っているが、コロナ禍の後、多額の債務を抱え、手元資金が不足している。

 貧しい国々の公的債務残高の国内総生産(GDP)比は平均で70%近くに達しており、今もなお上昇している。