PDCAとOODAと「守破離」の違い

──PDCAやOODAのような意思決定モデルと比べて、守破離は何が違うのでしょうか。

西平:守破離は抽象度が高いと思います。守破離は意思決定をマネジメントする道具と見るより、「大まかな見取り図を作るための知恵」とみた方がしっくりきます。

 PDCAは計画を立て、目標を設定し、それに沿ってずれないように整える発想です。フィードバックを踏まえて「Plan」を立て直すことは、守破離の「守」に立ち返る感覚に近い。

 一方、OODAは、Observe(観察)→Orient(状況判断・意味づけ)→Decide(意思決定)→Act(行動)という流れで、変化する状況の中で判断を更新し続ける発想です。

 あらかじめ立てた計画を着実に実行するというよりも、その場その場で何が起きているかを見極めながら、素早く方向修正していく。戦場での意思決定モデルとも言われますが、要するに、変化の只中で機敏に対応するための知恵です。

 守破離で言えば、PDCAは「守」に当たるものなのに対して(型や計画を重視する)、OODAは「破」に当たります(状況への適応を重視する)。守破離の教えは、そのどちらの道を選ぶか、選択を迫られる時の知恵です。

 どちらか一方だけが正しいのではありません。それぞれに長所があります。その時、「離」は、切迫する二者択一から少し離れ、広い視野の中で見直す視点です。あるいは、「破」に進む場合も「守」を忘れるな、常に全体の流れを忘れるな、という教えです。

「離」は、型を捨て去ることではありません。型を使うこともできるし、使わないこともできる。今は型通りにやる方がいいと分かれば、ためらいなく型通りにできる。逆に、今は外すべきだと分かれば、外すことができる。その距離感をもった「自在」の境地が「離」の教えです。

 言い換えれば、守破離はしなやかさの教えです。特定のモデルにのめり込むのではありません。むしろ柔軟に適応する。ただ、逆説的ですが、柔軟であるためには、基礎・基本がしっかりしていなければなりません。土台がしっかりしていないとしなやかになれない。その意味で、守破離は判断の筋力を育てる枠組みなのかもしれません。