エプスタイン2026の焦点:アメリカン・セレブリティの場合
米国での疑惑は、トランプ氏が現職大統領だったりする分、アンドルー元王子より露骨で悪質でしょう。
まず「未成年者への性的虐待・暴行の容疑」が濃厚だと米国を中心に報道されていることです。
1980年代から90年代にかけて、当時未成年だった女性たちに対し、エプスタイン元被告の邸宅などで性的虐待や暴行を加えたとする捜査資料の存在が明らかになっています。
しかも、米司法省(DOJ)はトランプ氏に対するこれらの告発を含む「FBI聴取記録」の一部を公開しなかったとして批判を浴びており、現在も調査が継続中です。
これに加えて、アンドルー元王子同様、トランプ氏も「エプスタイン元被告との親密な交流」に関して虚偽の説明をしていた疑いがもたれています。
トランプ氏はかつて、「エプスタインとは15年近く会っておらず、専用機にも乗ったことがない」と米国のメディアに語っていました。
ところが、捜査の結果、1990年代にエプスタイン元被告の自家用機「ロリータ・エクスプレス」に複数回搭乗していた証拠が示されました。
またエプスタイン元被告が起訴される直前まで交流があった記録も出て、過去の説明の信憑性が問われています。
さらにトランプ氏の場合、現職の大統領としての権限を用い、自身に不都合な情報を意図的に伏せているという批判が出ています。
トランプ氏自身は、こうした疑惑を「民主党による捏造」と主張して応戦しているのが現状でしょう。
こうした政治家のほか、「エプスタイン問題」は、私がJBpressで7年前に指摘した、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でAIラボを立ち上げ、後にメディア・ラボを設立、そちらに移り、「AIの父」とも呼ばれたマービン・ミンスキー(1927-2016)など、基礎科学者の名が取沙汰されています。
しかし、日本の報道ではあまり取り上げられていません。内容が高度で専門的なため、腰が引けた印象がありますが、一通り列挙してみましょう。
1969年にノーベル物理学賞を受けたマレー・ゲルマン(1929-2019)は「クォークの父」と呼ばれた素粒子物理の泰斗で、1980年代以降は「複雑系」の理論展開もリード、言語学など多岐にわたる研究領域でも知られます。
同時にベトナム戦争への協力など倫理的な問題も常に指摘され続けた人物でもありました。
1994年の著書「クオークとジャガー」内にエプスタイン元被告からサンタフェ研究所への資金援助に対して公式に謝意を示しています。
ゲルマンの弟子筋ともいえる2004年にノーベル物理学賞を受けたフランク・ウィルチェック氏も、エプスタインからの資金援助が報じられています。
こちらは英国人で、かつノーベル賞を受ける前に逝去しましたが、著名な宇宙物理学者スティーヴン・ホーキング(1942-2018)も、エプスタイン元被告との交流が報じられています。
ホーキング逝去後の2020年、ブラックホール観測に成功した実験家たちと並んでホーキングの盟友、ロジャー・ペンローズ氏がノーベル物理学賞を受けましたが、これは元来ホーキングが受けるべきものだったことは、多くの物理関係者が分かっている話です。
先ほどのゲルマンもエプスタイン元被告が死亡したのと同じ2019年の5月に89歳で亡くなっており、ホーキングもゲルマンも「性的虐待」などの疑惑とは関連が薄いと思われます。
これはゲルマンよりさらに2歳年上のミンスキーにしても同様で、最先端科学に対する「タニマチ」的な存在でもあったエプスタイン元被告との縁でしょう。
しかし、私がJBpressで7年前にも指摘したように、リーマンショック以降、「どんなカネでもカネはカネ」と、損失補填に勤しんだMITメディア・ラボなどが結果的に疑惑の金銭を手にして自滅したケースを見るにつけ、他山の石とは思えません。
ちなみに2019年の私の記事にも記し、メディア・ラボ所長を辞した伊藤穣一氏は現在、千葉工業大学学長のポストにあるようです。
米司法省が公開したエプスタイン文書には多数(数千規模)名前が出ていると報道され、エプスタイン元被告が保有していたセント・ジェームズ島への渡航写真なども出てきてしまったようです。
千葉工大は学生のご家族にどのように説明するのでしょうか?
あるいはそうした問い合わせのない、無風で終わるのか?
今現在の日本の教育界も、その倫理審級を問われるものでしょう。
ここでは、日本の大学は少子高齢化による学生数の減少や政府給付金の減額など、金策的に厳しい状況が続いていることを指摘しておくにとどめましょう。
そのような経営環境で、出所のはっきりしない献金があったとして、それを手にするリスクはないのか、読者の想像にお任せします。