戦場の地形:国境なき情報空間
いま争われているのは領土でも軍事力でもない。国家の判断力そのものをめぐる、境界なき情報戦である。
この戦場には国境線がなく、軍服も銃声も存在しない。攻撃は匿名で行われ、発信源は曖昧で、発見されたときにはすでに社会の内部に溶け込んでいる。
情報空間は、民主主義国家にとって最も守りにくい領域である。
自由な言論、開かれた社会、透明性――。これらは民主主義の強みであると同時に、外部勢力にとって「侵入しやすい地形」でもある。
敵の戦法:超限戦という総合戦
中国の対外工作を理解するうえでカギとなるのが、「超限戦」という発想である。
これは、軍事・外交・経済・情報・法律・金融・文化など、あらゆる領域を戦いの対象とみなし、国家間の競争を総合的に展開するという考え方だとされる。
●戦争と平時の境界を消す
●国家・企業・個人を一体化させる
●長期的に相手国の社会に「沈殿する影響」を与える
この戦法は、欧米や日本が前提としてきた「戦争と平和の区別」「軍事と非軍事の分離」といった枠組みとは根本的に異なる。
つまり、相手はすでに戦争を仕掛けているのに、こちらはまだ「平時」のつもりでいるという非対称が生まれる。