リーダーに必要なのはIQよりEQ
──小林さんは、今はテレビ東京の人気経済ドキュメンタリー番組『ガイアの夜明け』のチーフ・プロデューサーです。数多くの大成功した経営者や創業者を見てきたと思いますが、頑固者と柔軟な現実主義者のどちらが多いのでしょうか?
小林:「頑固者か、現実主義者か」という軸では分けられないと思いますね。ただ、押し並べて責任感の強い人が多いという印象を持っています。
平井さんはソニーの経営をV字回復させましたが、その後、自ら素早く退任しました。平井さんは、リーダーの見え方・見せ方に対する責任を重視する方です。「リーダーは言ったことの責任も、言わなかったことの責任も問われる」と講義で述べていました。
社員はリーダーの一挙手一投足を見ていて、リーダーが腕時計を見たら、部下は「私の説明がつまらないのか」と感じてしまう。リーダーが部下の良くない行動を見て見ぬふりをすれば、誤ったメッセージを組織に発信してしまう。
日本ではしばしば、リーダーに「忖度する」とか「空気を読め」などと言われますが、平井さんはむしろ、リーダー自身がメッセージや発信、その伝わり方に責任を持つべきだと考えています。とても重い責任をリーダーに突きつけているということです。

──EQの高い人がリーダーになり、IQの高い人たちに最大限能力を発揮してもらうことがいかに大切か、ということも平井さんは熱弁しています。
小林:IQが高い人、すなわち能力が高い人が業績を上げて出世すると、今度は部下のマネジメントする立場になります。この時に求められるものが大きく変わります。
でも、部下が上司に求めているのはIQの高さではありません。一緒に悩んでくれたり、必要な決断を後押ししてくれたり、リーダーに求められるのはIQとは違う能力です。能力が高いことでリーダーに選ばれたのに、リーダーになるとそれまでの能力は求められていないという現実──。平井さんは「名選手は名監督にあらず」と語っていました。
もっとも、日本の企業もだんだんと状況が変化しています。ジョブ型でひたすらプロフェッショナルの道を進むというキャリアがある一方、マネージャーになるという道もある。企業の中でも二層構造が生まれ始めています。IQとEQ、リーダーに求められる要素が異なることを理解して、どのような組織や人事制度を構築していくのかは今後の日本企業の大きな課題です。
小林 洋達 (こばやし ひろたつ)
テレビ東京報道局「ガイアの夜明け」チーフ・プロデューサー
1998年にテレビ東京入社後、一貫して報道分野を歩む。「ワールドビジネスサテライト」、東証・日銀担当記者、「ガイアの夜明け」立ち上げ、北京支局、「カンブリア宮殿」、ニューヨーク支局、「Newsモーニングサテライト」などを担当。経済を切り口にドキュメンタリーを多く制作し、北京五輪開催を控えた中国では「癌の村」や「胡同の町の強制立ち退き」の作品を制作した。2018年1月から2022年1月までの4年間はニューヨーク支局に赴任し、新型コロナウイルス感染拡大やブラック・ライブズ・マター(BLM=黒人の命は大切だ)運動など社会を揺るがす市民運動、米大統領選などを特集している。「ガイアの夜明け」では、2003年のイラク戦争が開戦するまでクウェートで長期取材したほか、2012年には中国で反日暴動に襲撃された日系の百貨店「平和堂」が再開するまでを潜入取材。「カンブリア宮殿」では、サッカーW杯・南アフリカ大会で初の16強入りを果たした岡田武史元監督の独占取材を敢行している。2025年4月から「ガイアの夜明け」チーフ・プロデューサーを務める。
長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。