永守氏が語っていた「人生はサインカーブ」という言葉

小林:永守さんがモーサテ塾の講義でお話ししていた「人生はサインカーブ」という言葉が今となっては非常に印象的です。どんな人生にも、良い時もあれば悪い時もある。自分の人生はそのサインカーブの波の振れ幅が大きいのだと言っていました。

 不正会計疑惑が取り沙汰される前、ニデックは新たな成長の道を必死に模索していました。そうした中で無理をする部分もあったのかもしれません。今回の不正会計疑惑は、間違いなく創業以来の50年でも重大局面です。

 永守さんが築き上げた企業風土の見直しを余儀なくされる中、ニデックという会社が永守さんというカリスマ依存から脱却し、次の成長のあり方を見つける可能性はあると思います。それは、永守さんにとって我が子のような存在である会社が自立を模索する道でもあります。

──モーサテ塾の講義で永守さんの人柄を感じた部分はどんなところでしたか?

小林:永守さんは、非常に負けん気の強い努力家です。貧しい農家の出身だった永守さんは、小学生のときに学校の先生から冷たい仕打ちを受けました。ところが、永守さんはあえてその先生の写真を部屋の壁に貼り、「ナニクソ」と思いながら闘志を燃やして勉強したそうです。職業訓練大学校の学生時代も誰よりも勉強して、一番前の席に座り先生を徹底的に論破してやり込めたそうです。

 また、事業を始めた当初、銀行から大きな融資を受けられなかった永守さんは、20社以上の生命保険会社からそれぞれ1憶円単位の保険をかけて資金を作ったという凄まじいお話もありました。当時は生命保険が借金の担保になりました。もし返すことができなければ自殺して返すということです。「自分で自分を動機づけできるか」というのが、永守さんが語った最大の哲学です。

──2012年に51歳でソニーの社長に就任し、就任期間中の5年間でどん底にあったソニーの業績を復活に導いた平井一夫さんもモーサテ塾の講師として登場しています。半導体、リチウムイオン電池、パソコンなど、ソニーの強みにも見える事業を次々と手放す決断をした平井さんは、どのようにソニーを復活させたのでしょうか?

小林:「悪い決断ほど早くする」ことが平井さんの哲学です。「いつか良くなるかもしれない」と様子見を続けたところで状況が良くなることは、ほとんどないとお話ししていました。

 ただ、大きな事業を辞めるには勇気が必要です。その部分について、平井さんは正しい判断を下すには、リーダーとして正しい人間でいることが大切だと語っていました。リーダーが正しい人間であれば、周りの人たちが実情や本心を率直に話すことができます。正しい情報が出てくれば、議論をする中で自信を持ってリーダーは決断できる。

 また、決断が間違った時に「間違いました、ごめんなさい」と言える勇気を持つことが重要だとも話していました。平井さんの哲学には、リーダーが迅速に決断するために必要な言葉があふれています。