対米投資合意の履行はどうなる?
グリア通商代表は、1974年通商法301条に基づく主要貿易相手国を対象とした調査の開始や、1962年通商拡大法232条に基づく分野別関税の拡大をすでに表明している。122条関税は、いずれ301条や232条に基づく関税へと移行することになるだろう。トランプ関税には引き続き注意が必要ということだ。
今回の最高裁判決により、2025年7月の日米関税合意が前提としていた状況は大きく変わった。日本にとって不利な変化であり、これについては何らかの調整が可能かもしれないが、関税率に関しては122条関税の下ではトランプ政権にあまり裁量がない。
かといって、合意の履行を取りやめることは良策とは思えない。そもそも、日本の対米輸出総額の3分の1以上を占める自動車・同部品に関する関税は、今回の最高裁判決の影響を受けない。
日米合意によって、25%の追加関税がMFN税率込みで15%に引き下げられている。5500億ドルの対米投資を中止したりすれば、自動車関税は引き上げられ、301条関税の対象とされることになるだろう。
これは、日本以外の各国も同様である。関税の還付問題も含め、トランプ関税に悩まされる日々は残念ながら今後も続く。
菅原 淳一(すがわら・じゅんいち)
株式会社オウルズコンサルティンググループ・プリンシパル
経済協力開発機構(OECD)日本政府代表部専門調査員(貿易・投資・非加盟国協力担当)、みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社調査部主席研究員(プリンシパル)(通商、経済安全保障等を担当)等を経て現職。一般財団法人国際貿易投資研究所(ITI) 客員研究員。
通商政策や経済安全保障に関する政策分析に長年従事。WTO、EPA(FTA、TPP、RCEP等)、APEC、日米・米中通商関係、主要国の経済安全保障戦略などに関し、寄稿、講演、テレビ・ラジオ出演、研究機関研究会・経済団体委員会委員等多数。