それでもビットコインの底が近いと考える理由
ここまで悲観的なシナリオを整理してきたが、市場構造の変化を踏まえれば、今回の下落局面における下値余地は過去のサイクルほど大きくないと考えられる。最大の背景は、2024年以降に進んだ機関投資家層の本格参入である。特にビットコイン現物ETFの承認は、市場構造そのものを変える転換点となった。
ETF経由の資金は、短期的な値幅取りよりも中長期的な資産配分の文脈で運用される傾向が強い。直近の値動きを見ても、市場の主導権は個人投資家よりETF経由の資金フローへと移行しつつある。
過去の下落局面で繰り返されてきた投機的な過熱と投げ売りの連鎖は相対的に抑制され、需給構造はより制度的要因に左右されやすくなっている。これはボラティリティの完全な低下を意味しないものの、価格調整の性質を変える重要な変化である。
さらに、各国における暗号資産規制の進展も後押しとなり、大手金融機関による関連事業への本格参入が進んでいる。これにより、ETFに依存しない形でも市場参加者の裾野は着実に広がりつつある。
この文脈で特に重要となるのが、現在米国で議論が続くCLARITY法案の行方である。協議が前進すれば規制区分の明確化を通じて投資資金の回帰を促す可能性があり、逆に難航すれば業界全体の慎重姿勢が強まりやすい。
底値の見通しでは、過去の半減期サイクルとの比較が依然として意識されている。仮に高値から約60%の調整が進む場合、5万ドル前後は一つの下値目処として認識されやすい。先日、スタンダード・チャータード銀行が発表した見通しでも、この水準が短期的な下値の目途とされた。
一方で、70%を超える極端な暴落シナリオも理論上は排除できない。ただし、そのような事態に至るには、市場全体を揺るがすような大規模な信用イベントが発生する必要があるだろう。
足元では価格が軟調に推移しているものの、重要なのはビットコインがすでに成熟した資産クラスへ移行しつつある点である。ETFの普及や規制整備の進展、機関投資家の存在感拡大といった構造変化は、上昇局面だけでなく下落局面においても相場のあり方に影響を及ぼす。価格調整は避けられないとしても、その振幅や継続期間が過去と同一になるとは限らない。
この点を踏まえれば、現在の下落局面は単なる悲観材料ではなく、中長期的な投資機会として評価される余地もある。市場の不安定化要因を見極めつつ、構造的変化を踏まえて冷静に判断する姿勢が求められる。
※本稿は筆者個人の見解です。実際の投資に関しては、ご自身の判断と責任において行われますようお願い申し上げます。