さらに下落するリスクは?
足元の価格調整が一時的な変動にとどまるかを考える上で、暗号資産業界固有のリスクは無視できない。特に市場の警戒を誘っているのが、暗号資産関連企業を巡る信用不安である。
象徴的な事例がブロックフィルズの入出金停止問題だ。入出金停止は、資金繰り悪化やその後の経営破綻につながる可能性を想起させ、市場心理を一気に冷やしやすい。
昨年10月以降、相場が下落基調へ転じる中で、収益構造の脆弱な事業者への懸念は徐々に強まっていた。暗号資産市場では、上昇局面では持続可能に見えていたビジネスモデルが、価格調整局面では急速に不安定化することがある。
実際、2025年後半にはステーブルコインを巡る信用イベントが相次いだ。世界最大の暗号資産取引所バイナンスでは、一部の取引ペアで法定通貨との連動性が失われたことを契機に、史上最大規模の清算イベントが起きた。その影響からか、他のプロジェクトでも後発ステーブルコインのデペッグが確認され、市場参加者に損失をもたらした。
もし、これらの信用イベントや2026年に入ってからのビットコイン下落を背景に、ステーブルコインを活用した暗号資産関連事業者の経営が水面下で悪化しているとすれば、今後さらなる信用不安が顕在化する可能性は否定できない。
収益や担保価値が価格動向に強く依存する構造のもとでは、相場下落が財務体質の弱いプレーヤーを直撃し、その過程で資産売却が連鎖するリスクがある。その展開は、2022年のテラショック時に見られた構図とも重なる。結果として、流動性の高いビットコインが換金対象となり、市場全体の下押し圧力が強まる可能性もある。
加えて、ビットコインを大量保有する暗号資産トレジャリー企業の動向も重要なリスク要因である。価格下落による評価損の拡大は財務を圧迫し、資産売却圧力を通じて市場に影響を及ぼしうる。
特にメタプラネットのような象徴的企業において財務戦略の見直しが迫られる事態となれば、その影響は投資家心理を通じてビットコイン市場全体へ波及する可能性がある。
暗号資産市場の調整局面で繰り返されてきたのは、価格下落そのものよりも信用不安の連鎖が問題となる構図である。現在の相場もまた、このリスク領域との距離を慎重に見極める段階にある。