ただし、どうせやるなら体制中枢を一気に叩き潰すべきで、見せしめ的で中途半端な攻撃や、無辜の市民を巻き込む泥沼の戦争に発展するようなことは避けるべきとも考えている。

「米国の攻撃は、体制を滅ぼし、祖国を甦らせる結果とならなければ意味がない」——。

 おそらく、これが現状におけるイラン人の一般的見解だ。

「昔はイランから逃げるカネがなかった。今はイランにとどまるカネすらない」

 そんな彼らからしてみたら、いま行われている対米協議など、「何をもたもたしてるんだ!」という話である。米国との合意は、それがいかなるものであっても結果的に“イスラム”体制の延命につながってしまう。体制の寿命が一日延びれば、国民はその分だけ圧政に苦しまなければならないのだ。

 トランプの交渉は、攻撃に向けた単なる時間稼ぎなのか、それとも本気で合意に達することを目指しているのか。それは、現段階では誰にも分からない。

 いまイラン人たちのインスタグラムを覗くと、いわゆるショートコント的な動画がバズっている。

 例えば、肉屋の店先にお客が列をなしている。彼らは代わる代わる、物欲しげな表情でなけなしのカネを店主に渡しながら、「この額で肉の香りを嗅いでいいですか」とか、「この額なら香りを嗅いだうえに、肉を抱きしめてもいいですよね」などと許可を求める。しかし、実際に肉を買って帰るお客は一人もいない。

 あるいは、ひょうきんな顔つきの中年男が虚空を見上げながらぼやく。「昔はイランから逃げるカネがなかったんだ。でもね、気づいたらイランにとどまるカネすらなくなってたよ」