第4部 ロシア産原油鉱区井戸元生産原価概観

 原油生産原価は極秘情報のはずですが、不思議なことに、ロシア連邦統計庁は2024年第1四半期まで毎年四半期ごとの井戸元原油生産原価を公表していました(2024年1四半期以降は未発表)。

 生産原価は(ルーブル/トン)表示なので、これをその年のドル・ルーブル換算レートで割り、ドル表示の油価(ドル/トン)を1トン=7.3バレルで換算すると下記グラフのようになります。

 輸出港までの露国内PL輸送費をバレル$3~$4程度と仮置きすれば、2022年の露FOB原価は約$53、2023年は約$45、2024年は約$50になります。

 2021年から生産原価が急騰しているのは、対露経済制裁措置強化に伴い、ロシア国内の原油生産原価が上昇したものと推測されます。

 また、2024年から炭化水素資源採取税が大幅増税となり、今後ロシアの原油生産原価はさらに上昇していくことが予見されます。


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 付言すれば、欧米は2022年12月5日、ロシア産海上輸送原油に対し上限油価バレル$60(FOB)を発動。2023年2月5日には石油製品の上限設定(軽油類$100/重油類$45)も導入。日本政府もこの措置に追随する旨を発表しました。

 なお、上限価格はあくまでも海上輸送による油価上限であり、PL輸送原油には適用されません。

 上述通り、ロシア産原油の2023年FOB輸出原価はバレル$45、2024年$50程度と推測されます。

 2024年1四半期以降は未発表ですが、仮に同程度の生産原価と仮定すれば、2025年以降の露原油鉱区井戸元原油生産原価は約$47、FOB輸出原価は約$50となります。

 現行油価(ウラル原油)は$40ですから、ロシアの石油会社は原油を生産すればするほど、輸出すれば輸出するほど、赤字幅が増大することになります。

 ゆえに2025年11月以降、ロシア石油産業は未知の領域に入り、今年は経営困難に陥り、倒産する会社が出現しても不思議ではありません。

 国家レベルで申せば、露財政赤字幅はさらなる拡大必至となり、ロシアの継戦能力低下は不可避。

「ウクライナが領土割譲しなければ、ロシアは完全制圧を目指す」と宣言したプーチン大統領の強気発言は焦りの裏返しにすぎないと言えましょう。

後編につづく)