国家の寿命を削る経済構造

 ロシア経済は表面上こそ大国に見えるが、その実態は資源依存と軍需偏重に支えられた脆弱な構造である。

 石油・ガス収入は制裁と価格下落で急減し、国家財政は逼迫した。政府は戦時予算を維持するため、医療・教育・社会保障を切り捨て、軍事費と治安機関への支出を優先した。

 ロシアの経済運営は、国家の未来を担う分野を犠牲にし、体制維持のための部門だけを肥大化させる構造へと変質した。これは短期的には継戦を可能にするが、長期的には国家の寿命を削る行為にほかならない。

 さらに、ロシアのこうした継戦モデルは「燃え尽き型」である。

 老朽化したインフラの放置、医療体制の崩壊、人口減少の加速、技術者の国外流出――。これらは戦後の再建能力を根本から奪う。ロシアは未来を前借りしながら現在の戦争を維持していることになる。

軍需産業の実力と限界

 ロシアは制裁下にありながら、推計で砲弾を年間300万発規模(砲兵用弾薬全般)生産する体制を築いた。また、別の推計では2024年に約450万発(生産・改修合算)という見立てもある。

 これは西側諸国の総生産量を上回る規模であり、ロシアが完全に「量で押す戦争」へと舵を切ったことを示す。

 しかし、この生産モデルは民生部門を犠牲にした「戦時経済の極限形態」といえよう。

 医療機器は部品不足で修理不能となり、自動車産業は衰亡し、航空機は修理部品が足りず古い機体から取り外して何とか運航を維持している。

 ロシアはミサイルを作るために、国民生活を支える産業を切り捨てているようにしか見えない。

 また、軍需産業はその結果、量を維持できても質は確実に低下している。半導体不足は精密兵器の開発を阻み、技術者の流出は研究開発の基盤を弱体化させてしまう。

 ロシアは現在の戦場を量で支えるために、未来を先食いする経済へと変質しているようだ。