エピバチジンは「突発的な事故」を装うのに最適の“暗殺兵器”

 ナワリヌイ氏は獄中で「急に気分が悪くなって倒れた」とされ、ロシア当局は死因について遺族に「複数の疾患の組み合わせによる自然死」と伝えた。エピバチジンは極めて微量で呼吸困難、血圧上昇、痙攣を引き起こすため「急な体調不良によるショック死」に見せかけやすい。

 エピバチジンによる激しい不整脈や血圧変化は検視において「心不全」として片付けられる可能性が極めて高い。摂取から発症までの時間が短いため、外部からの救護が間に合わない「突発的な事故」を装うのに最適な“暗殺兵器”なのだ。

 エピバチジンはロシア国内に自生する生物からは採取できない。南米原産のカエルから抽出、あるいは精密な化学合成が必要であり「国家レベルの施設」でなければ、純度の高いエピバチジンを暗殺目的で調整、投与することは不可能だ。

 ボリス・ヴォロダルスキー元ソ連軍参謀本部情報総局(GRU)将校は05年当時、米紙ウォールストリート・ジャーナルへの寄稿で、ロシアの情報機関が管理する秘密施設「カメラ」(第12研究所)の存在を指摘している。