安倍政権時代の「反発」はどこへ?

 当時、リベラル派の文在寅(ムン・ジェイン)政権下の韓国社会は、歴史認識問題などで韓国を刺激し続けてきた安倍首相に対して強い警戒感を持っていた。日本では改憲への期待が一部で高まり、日本会議などの動きについて韓国メディアが逐一報じるようになっていた。韓国日報は「日本の極右は今がチャンス。大規模改憲集会を開催」、聯合ニュースは「日本の極右団体の改憲集会に与党議員が大挙出席」などと、批判を込めた見出しの記事を掲載している。

 さらに東亜日報は、露骨に安倍首相を批判する記事を掲載した。「戦争可能な国へ。敗戦以前に戻ろうとする野望」という見出しの記事で、安倍首相は母方の祖父でありA級戦犯の容疑がかけられた岸信介・元首相の遺志を継ぐことを目指していると説明されている。しかも、「岸元首相は太平洋戦争のA級戦犯容疑で逮捕され、3年間収監された過去がある。日本の侵略戦争が『間違っていない戦争』だったと生涯にわたり考えていた」と付け加えられている。

 すなわち、韓国にとって当時の安倍首相は、岸元首相とならび、戦争肯定主義者とされたのだ。

 この記事には、安倍首相が鎧の上に陣羽織を着用し、鞘(さや)から抜いた刀を肩にかけた姿のイラストが掲載されている*1。考えすぎかもしれないが、秀吉の朝鮮出兵(文禄・慶長の役)を彷彿とさせ、まるで日本が憲法改正をして韓国に攻め入ってくるような印象を与える。

*1“전쟁 가능한 나라로”… 敗戰이전으로 회귀하려는 야망

 ところが、今回はどうも様子が違う。中国が自民党の勝利に対して批判的コメントをしているという報道はいくつも見られるものの、韓国メディアが激しく日本批判を展開しているものは、今のところ確認できていない。

 いくつかの記事では、高市首相が安倍元首相の流れを汲む点を指摘して、高市首相が推し進めようとする改憲に対して、日本での核保有などの軍事化が進みうるといった点で警戒感を滲ませるものがある。だが、その論調はかつてのような日本批判に匹敵するものではない。