「オリンピックでメダルを獲りたいね」

「YS BLADES」の製造に携わる石川貴規氏(左)

 2021年は、オリンピックシーズンであり、翌年2月に北京オリンピックを控えていた。大会には、「YS BLADES」を履いた3人の選手が出場した。宇野昌磨、ペアの三浦璃来/木原龍一だ。

 3人は団体戦のメンバーとして銅メダル(のちに銀メダルに繰り上がった)を獲得する。

 個人戦でも宇野は銅メダルで表彰台に上がり、三浦/木原はペアでは日本史上初の入賞となる7位になったのである。翌月の世界選手権では宇野が金メダル、三浦/木原が日本ペアでは史上最高の銀メダルに輝いているが、オリンピックでの活躍により、彼らを支えた道具として、「YS BLADES」はテレビや新聞などで取り上げられた。

 石川はこう振り返る。

「小塚さんと開発を始めたときから、『オリンピックでメダルを獲りたいね』という話はありました。オリンピックで履いてくれて、3名がメダルを獲った。ようやくここまで来れたかなっていう思いはありました」

 2013年に開発が始まってから9年。長らく海外のメーカーが独占的なシェアを占めていたブレードの世界にあって、風穴を開けたことを一つ証明した大会であった。それは山一ハガネの、発想を含めた開発力と長年積み重ねた努力の証明でもあった。

 石川が感慨深く語るのも自然であった。その言葉には、そこまでにあったさまざまな困難を乗り越えてきたからこその思いが込められていたからだ。

 そして石川は、ブレード開発に携わる中で出会った、あるスケーターが今も心に残っているという。(後編に続く)

●「山一ハガネ」インタビュー後編はこちら

 

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