溶接ではなく大きな塊から削り出す

 ただ、フィギュアスケートは無縁の世界だったため、見よう見まねでデザインするところから始まり、既製品を分析し、製作に取り掛かった。

 そこで気づいたことがあった。ブレードは高価であるにもかかわらず、材料が安価なものであること。それが耐久性にもかかわっていたが、耐久性に欠ける要因はそのほかにもあった。スタートのときから今日まで開発に取り組んできた山一ハガネの石川貴規は言う。

「ブレードのベースの材質はとても柔らかいものでした。でも硬くしているパーツもある。柔らかいものと硬いものがくっついているので曲がってしまうんです」

 解決策として、まずは耐久性の高い特殊鋼を素材として使うことを決めた。

 パーツを溶接して作る従来の手法による品質のばらつきへの答えも導き出した。それは大きな塊から削り出してブレードにする手法だった。そうすれば、ブレード全体が一つのパーツとなり、部品を溶接してつなぎ合わせる必要はなくなる。いくつ作っても、品質を一定に保つことが可能となる。

 できあがったものを小塚が試して感触などをフィードバック。それを受けて、修正する作業が続いた。さらに無良崇人が2015年に使用を開始し、その作業にかかわるようになった。

「KOZUKA BLADES」そして「YS BLADES」へ

 さらに使用するスケーターが増える中、2018年4月24日、山一ハガネは記者発表会を開催、「KOZUKA BLADES」として世に送り出すことを発表するに至った。

 そのとき展示されたブレードは、11.5キログラムの塊から削り出された、わずか271グラムのブレード。ブレード自体に靭性(粘り)があり、ジャンプの着氷時などの衝撃の吸収性を向上させ、身体への負担の軽減を図るなど工夫が施されていることが伝えられた。

 耐久性については、「従来のブレードは男子なら1、2カ月、女子は8、9カ月で交換になるのに対し、16カ月はもつ」と出席した小塚が説明した。

 2021年10月には、「YS BLADES」を発表。

「『KOZUKA BLADES』は、小塚さんに合った仕様になっていることから、『ちょっと合わない』という声も選手の方々からけっこう出ていました。そこで、より多くの選手に使っていただけるよう、標準的なモデルをつくりました」(石川)

「KOZUKA BLADES」は1種類であったが、従来のメーカーは多数のラインナップをそろえて選手がセレクトできるようにしていることを考え、まずは「翔」と「舞」の2種類を発売。その後もラインナップを増やし、現在はアイスダンス用1種類を含め、計7種類を数える。

 その「YS BLADES」は、発売されて間もなく、大きな注目を集めることになった。