追加関税の後に米国債を減らし始めたインド

 米国による対ロ制裁の強化により、有力な新興国がドル離れを進めているという指摘は以前からなされており、米民主党バイデン政権で財務長官を務めたジャネット・イエレン氏もその可能性について認めたところである。制裁によってドル決済網から排除されるリスクに鑑みて、インドもまた慎重にドル離れを進めることにしたのかもしれない。

 とはいえ、外国人投資家の米国債の保有残高に占めるインド国籍の割合の低下に弾みがつくのは2025年に入ってから、つまり米共和党のトランプ政権が成立して以降のことである。米国は当初、いわゆるトランプ関税の枠組みで26%の関税をインド製品に課したが、インドがロシアから原油を輸入していることを問題視し、50%にそれを引き上げた。

 インド製品に対する50%の関税は2025年8月に発動されている。それ以降、インドは確かに保有する米国債の額を急ピッチで減らしている。これはインドによる事実上の対抗措置と言えるだろう。印パ関係や印中関係に鑑みれば、インドは地政学的に米国を味方につけておきたいところだろう。しかし、インドはドル離れをより重視したようだ。

 なお、インドと対峙する中国も、外貨準備に占めるドル建て資産の割合を着実に減らしている。一方で、米国から“塩を送られた”かたちのパキスタンは、少なくともTICデータから判断する限り、米国債を保有していないようだ。最後に確認できるのは2014年12月末時点の16億9200米ドルで、以降は数字自体が掲載されていない。

 トランプ大統領は2025年9月に、パキスタンのナワーズ・シャリーフ首相をホワイトハウスに招き、会談した。パキスタンとの友好関係をチラつかせ、インドに一段の圧力をかける観点からの行為だと考えられているが、TICデータを見る限りだと、パキスタンが米国債の保有を増やすことで米国に忠誠心を示したわけではないようだ。