増加する金準備が持つ意味合い

 インド準備銀行が半年ごとに発表する「外貨準備運用報告書」には、インドの外貨準備資産はドルのほかにユーロやポンド、円で構成されるという文言がある。貿易取引の構成や昨今の円通貨の信用力の低下を考慮に入れるなら、インドはドルの代わりにユーロやポンドの購入を増やしたのではないか。敵対する中国の人民元だとは考えにくい。

 インドが金準備を積み増したかのような報道もあるが、少なくとも2025年に限るとその形跡は見られない。国際通貨基金(IMF)の「国際金融統計」よりインドの国際準備(外貨準備と金準備の合計)の推移を確認すると、確かに金準備の額は膨らんでいるが、金の保有量そのものは横ばいであり、増えていないことが分かる(図表)。

インドの国際準備残高 (出所)IMF

 つまり2025年に準備が膨らんだのは数量が増えたからではなく、価格が上昇したためである。少なくとも2025年に、インドが地金を旺盛に購入した形跡は確認できない。むしろインドは、2023年から2024年にかけて地金を購入した形跡がある。これはバイデン前政権下で強化された対ロ制裁を嫌気した動きではないだろうか。

 またこのデータはあくまで残高、すなわちストックだ。この間の売買、要するにフローの動きまでは追うことができない。仮にインドが、貿易取引や金融取引に際して金決済の回数を増やしていたとすれば、金の保有量が増えてなくても、その評価は大きく変わってくる。実際にロシアとの間では、金での決済を試みているとの報道も散見される。

 ただし、最終的に地金の輸送(現送)を伴う金決済はコストが極めて大きく、ゆえに普及し難い側面がある。同様に米国との間で関係が悪化している欧州勢がインドに塩を送っていることもあり、現実的には金決済ではなく、ユーロやポンド、スイスフランなどでの決済を増やすことが、インドの現実的なドル離れの手段になるのだろう。