秀吉は天運、秀長は計略──同じ勝利を豊臣兄弟はどう受け止めたか
ドラマでは「桶狭間の戦い」のあと、勝利を味わう豊臣兄弟の姿が描かれたが、そのセリフが印象的だった。
秀吉は「だから言ったであろう! 信長様は、勝つと。そういう天運をお持ちなのだ!」と信長の強運ぶりに心酔している。
だが、秀長のほうは、信長の深謀遠慮ぶりに舌を巻く。
「本当にそうであろうか? ギリギリまで戦支度をせずに敵を領内におびき寄せたこと、佐久間盛重様の首が運ばれるのを見越して、義元の居所を突き止めたこと。そして、敵を油断させ、大軍勢を2つに分かれるように仕向けたこと。すべては殿様の計略じゃ。大したお方じゃ」
一方で、信長の胸中も明かされており、妹の市が「まこと、悪運がお強いこと」と声をかけると、信長は「わしもそう思う」とし、こんな心情を吐露している。
「あれこれ策を弄したところで、それがうまくいくとは限らぬ。こたびも、あの雨が我らの迫る足音を消してくれた。敵の鉄砲が使い物にならなくなった」
作戦がうまくいったことは事実だが、運の良さもあったと自身で振り返っている信長。つまり、秀吉と秀長、どちらも間違えてはいなかったわけだが、感じ方の違いが2人のキャラクターをよく表している。
直感で突き進む秀吉に、策を講じる秀長。そんな名コンビぶりが見られそうだ。
次回は「嘘から出た実(まこと)」。織田家中で御前試合を開き、秀吉は前田利家と対決する。
【参考文献】
『現代語訳 信長公記』(太田牛一著、中川太古訳、新人物文庫)
『信長記』(小瀬甫庵撰、石井恭二校注、現代思潮新社)
『信長の戦争』(藤本正行著、講談社学術文庫)
『日本戦史 桶狭間役』(参謀本部第4部編纂、参謀本部)
「桶狭間合戦考」(服部英雄著『名古屋城調査研究センター研究紀要』2号、2021年)
『多聞院日記索引』(杉山博編、角川書店)
『史料大成多聞院日記〈全5巻〉』(竹内理三編、臨川書店)
『図説 豊臣秀長 秀吉政権を支えた天下の柱石』(河内将芳著、戎光祥出版)
『豊臣秀長 シリーズ・織豊大名の研究』(柴裕之編、戎光祥出版)
『豊臣秀長のすべて』(新人物往来社編、新人物往来社)
『戦国最高のNo.2 豊臣秀長の人生と絆』(真山知幸著、日本能率協会マネジメントセンター)