グリーンランド領有を巡る経緯
本項は、各種報道を筆者が取りまとめたものである。
①2025年1月7日:大統領就任前の1月7日の記者会見で、トランプ氏はグリーンランドの獲得に向けて軍事・経済力を行使しないと保証できるかと問われ、それを約束するつもりはないと明言した。
②1月7日:グリーンランドの首都ヌークを訪問したドナルド・トランプ・ジュニア氏(トランプ氏の長男)は自身のSNSに、「MAGA」と書かれた赤い帽子をかぶった人たちと交流する写真や動画を投稿し、グリーンランドは米国とトランプが大好きだと書き込んだ。
ただ、デンマークの公共放送DRは、SNSに登場した人々の一定数はホテルの近くで陣営から声をかけられ、食事の提供を受ける代わりに帽子をかぶってメディアに出ることに同意したホームレスら生活困窮者だったと伝えた。
③2026年1月4日:ベネズエラへの攻撃に続き、トランプ氏は雑誌「アトランティック」の電話インタビューで、米国が介入対象とするのは、ベネズエラが最後の国ではない可能性を強調した。
そのうえで、グリーンランドについて、中国やロシアの船に囲まれているとして懸念を示したうえで、自国防衛の観点から絶対に必要だと述べ、改めて領有に意欲を示した。
④1月5日:トランプ氏がグリーンランドの領有に再び意欲を示したことを受けて、デンマークのフレデリクセン首相は、デンマークの放送局のインタビューで、トランプ氏が自治領グリーンランドを攻撃すれば、NATOの終焉を意味すると述べた。
⑤1月5日:マルコ・ルビオ米国務長官は、非公開会合で議員らに対し、米政権による最近のグリーンランドへの威嚇は差し迫った侵攻を示唆するものではなく、目標はデンマークから同島を購入することだと伝えた。
⑥1月6日:デンマークのフレデリクセン首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ドイツのフリードリッヒ・メルツ首相、スペインのペドロ・サンチェス首相、英国のキア・スターマー首相、イタリアのジョルジャ・メローニ首相、およびポーランドのドナルド・トゥスク首相の欧州の首脳7人がグリーンランドを米国のものにするという脅しを強めているトランプ氏を牽制する内容の共同声明を発表した。
共同声明の内容の詳細は後述する。
⑦1月7日:ルビオ米国務長官は、デンマーク側がトランプ政権関係者からの批判に対処すべく会談を要請したことを受け、次週にワシントンでデンマークとグリーンランドの当局者と会談すると述べた。
⑧1月8日:デンマーク自治領グリーンランド住民に対し、1人当たり最大10万ドル(約1500万円)の一時金支給をトランプ氏が検討しているとの報道があった。
一時金は1人当たり1万~10万ドルの間で検討されているという。グリーンランドの人口は約5万7000人で、総額は最大60億ドル(約9400億円)近くに上る。ただ、具体的な支給の時期や方法などは不明という。
⑨1月11日:トランプ氏は、大統領専用機内で記者団に対して、グリーンランドの防衛態勢について「犬ぞり2台分だ」と揶揄し、米国が守る必要性を訴えた。
さらに、米国が領有しなければ中国やロシアが獲得に乗り出すと主張し、グリーンランドは米国と合意するべきだと述べた。
⑩1月14日:米NBCテレビは、研究者や元米当局者が試算したものとして、トランプ政権がデンマーク自治領グリーンランドを買収した場合、費用の総額が最大7000億ドル(約110兆円)となる可能性があると報じた。
⑪1月14日:米国のJ・D・バンス副大統領とデンマークのラース・ロッケ・ラスムセン外相が、ホワイトハウスで会談した。
デンマーク自治領グリーンランドの領有権を巡って協議したが、不調に終わった。対話は継続する方針で、北極圏の安全保障について協議する作業部会を設置することでは一致した。
会談には米国のルビオ国務長官とグリーンランド自治政府のヴィヴィアン・モッツフェルト外相も参加した。
⑫1月15日:欧州7か国(英国、ドイツ、フランス、ノルウェー、スウェーデン、オランダ、フィンランド)が、デンマーク政府の要請に基づく演習という名目で、グリーンランドに部隊を派遣した。
各国が派遣した部隊はフランスが15人、ドイツが13人などごく小規模のものだ。
⑬1月17日:トランプ氏は、グリーンランドへの部隊派遣を決めた7か国およびデンマークの欧州8か国からのすべての輸入品に対し、新たに最大25%の関税を課す意向を示した。
トランプ氏が自身のSNSで明らかにした。トランプ氏は2月1日から10%の関税を課し、6月1日に関税率を25%に引き上げると表明。
米国による「グリーンランドの完全かつ全面的な購入に関する合意が成立するまで継続する」と強調した。
⑭1月18日:トランプ氏が関税引き上げの意向を示したことを受け、グリーンランドへの部隊派遣を決めた7か国およびデンマークの欧州8か国は、関税の脅しは欧米関係を損ない、危険な悪循環を招く恐れがあるとする共同声明を発表した。
⑮1月18日:NATOのルッテ事務総長は、X(旧ツイッター)で、グリーンランドと北極圏の安全保障情勢を巡り、トランプ氏と協議したと明らかにした。
ルッテ氏は引き続き問題に取り組む考えを示した上で、1月19日に開幕するダボス会議でトランプ氏と会うことを「楽しみにしている」と投稿した。
⑯1月21日:トランプ氏は、ダボス会議での演説で、グリーンランドの領有を巡り、軍事力を行使しないと発言した。
⑰1月21日:ダボス会議に出席したトランプ氏は演説後にNATOのルッテ事務総長と会談した。
トランプ氏が自身のSNSに投稿したところによると、「北極圏全体に関する将来の枠組みを構築する」ことで合意した。
トランプ氏は、これを踏まえて「2月1日に発効予定だった関税は発動しない」と明らかにした。
また、トランプ氏は自身が目指しているミサイル防衛プロジェクト「ゴールデンドーム」に関する協議が進行していることにも言及し、このプロジェクトにはグリーンランドが不可欠だと述べた。
⑱1月22日:EUは緊急首脳会議を開き、米国への対応を協議した。
会議後の記者会見で、EUのコスタ大統領は、EUは米国と良好な関係を築く取り組みを続けていくとして米国と対話を通じて解決策を探っていく方針を確認したことを明らかにした。
一方で、領土の一体性や主権を守ることは譲れないとの立場を改めて強調した。