NATOの将来についての私見

 欧州の過去の歴史は、欧州が欧州のみでは安全を確保することができないことを示している。

 また、2度の大戦で明らかなように欧州と米国の安全保障は、歴史的に非常に緊密に関連していることを示している。

 現在の欧州には、ロシアの強大な軍事力(通常および核)に対し欧州の戦略バランスを確保するために米国の軍事力が必要である。

 欧州は、昨年(2025年6月)のNATO首脳会議では、米国のNATOへの関与を引き留め、同盟の結束を維持しようと必死に働きかけた。

 しかし、トランプ氏は、同盟国(デンマーク領グリーンランド)への武力行使を示唆する言動を繰り返してきた。

 2026年1月6日、欧州の首脳7人がグリーンランドを米国のものにするという脅しを強めているトランプ大統領を牽制する内容の声明を発表した。オランダとカナダも声明を支持した。

 その声明は、トランプ政権の脅しに直接言及していないものの、北極圏の安全を守り、敵対勢力を抑止するためにNATOの存在が重要であると強調し、北極圏の安全保障は米国を含むNATO同盟国の連携によって集団的に確保されなければならず、それには主権、領土の保全、国境の不可侵という国連憲章の原則の尊重が含まれると明言している。

 その上で「グリーンランドはグリーンランドの人々のものである。デンマークとグリーンランドのことを決定するのは、デンマークとグリーンランドの当事者だけである」と断言している。

 筆者は、これは欧州からのトランプ氏への最後通牒であるとみている。

 トランプ氏がNATO脱退を希望するならそれもやむを得ないというものである。そして、欧州は、ポスト・トランプに、米国がNATOに復帰するのを待つことになるであろう。

 さて、在欧米軍は、ホスト国との地位協定により駐留している。

 したがって、米国がNATOを脱退しても、在欧米軍はホスト国との二国間協定に基づいて駐留を継続することが法的に可能である。

 在欧米軍の正確な人数は変動するが、現在、約8万4000人とみられている。これだけの兵員を一度に米本土の基地に受け入れることは困難であろう。

 したがって、多くの部隊はそのまま欧州に駐留することになると筆者はみている。

 そうすると、米国がNATOを脱退すれば、米軍はNATO軍の指揮系統から外れるが、必要な場合は、NATO(北大西洋理事会)と米国政府が、新たな協定を結べば、欧州に駐留する米軍とNATO軍は、共同で軍事作戦を遂行することができる。

 最後に、欧州がこのように強い態度に出られるのは、以前からEUが米国の安全保障における関与の不確実性に対して、他国に依存しない「戦略的自律性」の強化に努力しているからである。

 翻って、日本も日米同盟を基軸としつつも、日本の「戦略的自律性」の強化に本格的に取り組むことを願っている。