これで終わりじゃない

2026年1月24日、フィギュアスケート四大陸選手権、ペア、フリーで演技する長岡、森口 写真/共同通信社

 覚悟を決めて取り組むとともに、変化を生んだのはコーチをドミトリー・サビンに変更することだった。

 その指導では、パートごとに分けての練習に比重が増え、それぞれの要素のつなぎへの意識も高め、その結果、全体のレベルの向上を図ることができた。

 何よりもサビンがもたらしたのは、「威信を持つこと」の大切さだった。2人の持つスピードやダイナミックさをはじめとする潜在能力を信じる指導者の姿勢もあって、2人は自分たちを信じる力を手に入れた。

 そして昨年末の全日本選手権では、三浦璃来/木原龍一の棄権はあったが2年ぶり2度目の優勝。2024年の176.68点から215.30点という大幅な得点向上も成長を物語っている。

 もともとペアの経験を持つ森口がどちらかと言えばリードする関係にあったが時を過ごす中で信頼関係を高めてきた。試合後の取材の場でも互いを思いやる気持ちが伝わってくる。

 日本のペアは、三浦と木原が新たな歴史を築いてきた。そしてその後に続く、世界で戦っていくことができるペアが誕生したことをあらためて実感させた四大陸選手権。

 その大会での銅メダルに、森口はこう語る。

「すごいうれしくて、いい思い出になるなと思いますし、でもこれで終わりじゃないし、素晴しいスケーターたちと練習して試合をして、という経験を積めたので、できるだけ上に行けるように、と思います。将来的にはこのメダルをきっかけに目指すところを高く、世界選手権、さらにオリンピックで金色のメダルを獲れたらなと思います」

 先々を見据え、青写真を描く言葉を現実とすべく、歩んでいくだろう。その力も2人は備えている。

 まずはミラノ・コルティナオリンピックが控える。自分たちへの信頼と自信を武器とし、さらなる飛躍を期して、初の大舞台へ挑む。

*JBpressでの連載「フィギュアスケートを支える人々」(2024年8月30日公開までの一部)と、書き下ろしを含む電子書籍『日本のフィギュアスケート史 オリンピックを中心に辿る100年』(松原孝臣著/日本ビジネスプレス刊)が発売中です。

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著者:松原孝臣
出版社:日本ビジネスプレス(SYNCHRONOUS BOOKS)
定価:1650円(税込)
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 冬季オリンピックが開催されるたびに、日本でも花形競技の一つとして存在感を高めてきたフィギュアスケート。日本人が世界のトップで戦うのが当たり前になっている現在、そこに至るまでには、長い年月にわたる、多くの人々の努力があった——。

 日本人がフィギュアスケート競技で初めて出場した1932年レークプラシッド大会から2022年北京大会までを振り返るとともに、選手たちを支えたプロフェッショナルへの取材を掲載。

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