中露と列強の時代をつくろうとする第2次トランプ政権

 旧ソ連のウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンについては1994年、核兵器を所有しないことを条件に米英露3カ国がその独立・主権・領土と安全を保障するブダペスト覚書を結んだ。しかしウクライナに関してプーチン氏はこの合意を反故にした。

 EUは平和と繁栄の礎となり、米国や中国に対抗する第三極を形成してきた。NATOがあるのに欧州統一軍をつくることは屋上屋を架すことになる。しかし欧州のリベラル勢力を敵視し、中露と列強の時代をつくろうとする第2次トランプ政権が正体を現したことで状況は激変した。

 EU最大の弱点は一つの政府が存在しないことだ。27カ国の利害が一致するとは限らないため、意思決定に時間がかかり、結論も玉虫色になりがちだ。欧州では2つの世界大戦で5500万~6700万人の命が失われた。その反省からEUには人類の平和への願いが刻み込まれている。

 欧州議会調査局は昨年、2035~45年を見据えた欧州の安全保障について5つのシナリオを分析した報告書を発表している。NATO依存を減らし、EU自身が軍事的な意思決定能力を持つ「戦略的自律」の必要性を強調した。