大国に挟まれた国家と国民の悲劇

 冷徹だが、欧州にとってウクライナはロシアの脅威に対する防護壁以上の意味はない。心中するつもりも毛頭ない。アンジェイ・ワイダ監督の名を世界に知らしめたポーランド映画『地下水道』(1957年)のラストシーンは大国に挟まれた国家と国民の悲劇を描いている。

 1944年のワルシャワ蜂起。ドイツ軍に追い詰められたポーランドの蜂起軍は悪臭に満ちた暗い地下水道を這い進み、排水口にたどり着く。しかし出口には重い鉄格子がはめられ、美しいヴィスワ川の対岸にはドイツ軍を追い払い進軍してきたソ連軍が到着していた。

 ヨシフ・スターリンは蜂起軍がドイツ軍に殲滅されるのを静観した。蜂起軍はロンドンの亡命政府を支持しており、戦後ポーランドを共産化したいスターリンにとっては邪魔な存在。そこでドイツ軍に掃除させ、弱り切ったところでワルシャワを支配しようと考えたのだ。

「助けはすぐそこにあるのに、決して手は差し伸べられない」という大国の政治的思惑によって切り捨てられたポーランドだけでなく、中・東欧諸国、ユーゴ諸国、バルト三国もNATOや欧州連合(EU)加盟を急いだ。しかしウクライナはロシアの庇護下に残った。