中東では、イラン情勢が不安定化している。革命で、1979年にイラン・イスラム共和国が成立して以来、宗教指導者による統治が続いてきた。しかし、欧米による経済制裁の影響もあって、経済情勢は悪化し、人々は街頭に出て、抗議デモを繰り返している。イラン政府は、インターネットを遮断して情報管理を行っているが、数千人の死者が出ているという。
トランプは、イラン政府がデモ隊を弾圧したら、軍事介入すると公言し、その準備を進めている。しかし、イランは軍事大国であり、激しい報復が予想され、安易には介入できないのが現状である。
アメリカが軍事介入する場合、イスラエルとの共同作戦となろう。中東の勢力地図が大きく変わることになる。
トランプ流のアメリカ第一主義、「ドンロー主義」は第二次世界大戦後の国際秩序に終止符を打つ。
習近平はどう動く
ドンロー主義のアメリカに対して、中国はどう動くのか。中国は、アメリカを覇権国の座から追い落とし、自らが世界の支配者になろうとしている。つまり、パックス・アメリカーナ(アメリカの平和)をパックス・シニカ(中国の平和)に変えようとしている。
今のところ、中国のほうがアメリカよりも数多くのカードを持っている。レアアース、アメリカ農産物の輸入など、交渉の材料は十分にある。また、貿易相手国を多元化する努力を重ね、アメリカの圧力を回避する手を打っている。
そのような戦略の下、習近平主席は盤石の支配体制を構築している。習近平の3期目の任期は2027年に終わるが、4期目も継続して統治する勢いである。
日中首脳会談を前に中国の習近平国家主席(右)と握手を交わす高市首相=10月、韓国・慶州(写真:共同通信社)
なぜ、そのような勢いを維持できているのか。国民は生活が豊かになれば、それで満足する。言論が自由であっても、生活が困窮すれば為政者に対して不満を抱く。
習近平政権下で、新型コロナ対策、不動産不況など、国民が不満を抱く様々な問題が起こっている。それでも、日本よりは経済成長率が高い。
習近平政権が発足した2012年の経済成長率は、7.9%であった。その後も、2015年までは、7%以上の成長率が続いた。2016年が6.85%、2017年が6.95%、2018年が6.95%であった。2019年は5.95%であったが、年末に新型コロナウイルスが流行し始め、2020年は2.24%となった。2021年は反動で8.45%となったが、2022年にはゼロコロナ政策で都市封鎖が行われ、2.99%に激減した。2023年には5.2%、2024年は5%であった。
2012年に習近平政権が発足してから、12年が経過した2024年を比較すると、中国のGDPは拡大し、中国人の生活は豊かになっている。一人当たりのGDPは、2012年に約6400ドルだったのが、2024年には約1万3000ドルと倍増している。毎年のように訪中する私の実感からも、その数字は裏付けられる。
日本の1人当たりGDPは、2012年に約4万9000ドルだったのが、2024年には約3万2000ドルと減っている。中国人が豊かになっているのに対して、日本人は貧しくなっているのである。
もちろん中国でも、経済格差は拡大しており、それは都市と農村、地域間、企業間、学歴間などで顕著である。そこで、中国政府は、「共同富裕」を掲げて、格差の是正を図ろうとしているが、十分な成果をあげているとは言えない。