リフレ的な拡張財政運営は心配無用か

 なお、足もとの市場では解散総選挙観測を受けて「世論のお墨付きを得て拡張財政が加速する」という展開が加速しているが、このような動きは持続しまい。あくまで高市政権は「責任ある積極財政」を標榜しており、これと平仄が合うように2026年度予算案の規模も(形式上は)穏当な範囲に抑えられた。

 高市首相の従前の言動が遵守されるならば、大型の補正予算は組まれないはずなので、世論もこれに準じて投票したという構図にある。その点を裏切るような拡張財政運営は基本的に取りにくいだろう。

 そもそも、世論が許しても市場が許してくれる雰囲気はない。野放図な政策運営に傾斜すれば金利上昇と円安によって強烈なけん制が入る。

 上述の通り、現行水準以上の円安が進めば輸入物価上昇は不可避である。こうした可能性が高く見積もられているからこそ、高市政権が早めの勝負に出る価値はあるというのが筆者の読みである。選挙の勝負に出た上で、一段とリフレ思想をアピールするような真似をすれば元の木阿弥なので、その心配は無用だろう。

 1月の解散総選挙が事実だとした場合、当面は「勝ち幅」に注目したトレードが展開されやすいと思われるが、これを材料とする円安・金利上昇というトレードは持続的な動きにはならないだろう。もっとも、解散総選挙がなくとも、円安が終息する目途は立っていないため、本件は中長期的な円安見通しに影響する話ではないとも考えている。

※寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です。また、2026年1日13日時点の分析です

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中