金融正常化の障害になる中国の経済圧力

 木原官房長官が会見で述べていたように、現時点では措置の対象がどこまで及ぶのか不明瞭な点が多いため、経済的な影響については精緻な議論が困難である。即日実施と言われる今回の措置が、統計を通じて問題把握につながるまで少なくとも1~2カ月はかかるだろう。

 しかし、元より消費者物価指数(CPI)の鈍化が見込まれる2026年において、実体経済への下押し圧力も加わるとすれば、日銀の正常化路線は頓挫しやすくなる。

 日銀の植田総裁が繰り返し述べるように、利上げはあくまで「経済・物価の見通しが実現していくとすれば」という条件付きである。中国の制裁を通じた外生ショックが加われば、既存の見通しは修正が必至である。

 直感的には今回の規制でレアアース等が不足すれば、製品が作れなくなる供給制約が発生し、インフレ圧力が高まりやすくなる。

 賃上げの牽引役である製造業において生産活動が停滞したり、代替調達コストで利益が圧迫されたりすれば、物価はともかく、賃金の上昇は難しくなると考えるのが自然だろう。結果として連続的な利上げは検討が難しくなるはずである。

 2010年と同じ展開を辿るのだとすれば、経済界(特に自動車・電機)から「政府の強硬姿勢が経済活動を阻害している」という突き上げが強まり、高市政権の足元が揺さぶられることになる。必然的に、現政権の持続可能性が争点化する。

 高市政権の特徴はリフレ政策と右派的な外交姿勢であり、双方に厚い支持があるからこそ70%超えの支持率を得ている現状がある。政権発足後2カ月経っているが、財政・金融政策面でリフレ色が強いわけでもなく、周辺の識者も含めた情報発信の作法を変えるだけで市場懸念は払拭できるだろう。さほど悲観する状況ではない。

 一方、外交姿勢は修正が難しいように見える。中国に対する強硬な姿勢も現時点で支持の源泉になっているのだとすれば、謝罪や撤回は逆に支持を落とす材料になると政権は考える可能性がある。

 確かに、「中国の不当な圧力に負けるな」というナショナリズムは理解できる。そもそも中国による挑発行為は日常茶飯事だった。ただ、本件に限って言えば、高市政権が仕掛けた格好にもなっており、世論がどこまで付いてくるのかは不透明だ。

 状況が窮まれば「なんとかしろ」と世論の不満が噴出するのは目に見えている。今はまだ「高市政権の経済政策」と「円安インフレ」の間の因果関係が曖昧ゆえ、問題にはなっていないが、国民が政権の理念のために生活苦に耐えられる期間はそれほど長くないだろう。