ロドリゲス暫定大統領の父親は筋金入りの極左活動家

坂口:彼女の政治家としてのキャリアにおいて、米国からの圧力でチャベス・マドゥロの反米路線が崩れかけた例は何度もありました。その度にロドリゲスはあの手この手を使い、政権の継続性を支えてきました。

 実は彼女の父親は獄中死した、マルクス主義者の極左活動家です。ベネズエラがまだ親米だったとき、アメリカのビジネスマン誘拐に関与した容疑で逮捕され、一説によれば拷問を受けて死にました。そんな父親を持つロドリゲスが、簡単にアメリカに魂を売るとは考えづらいです。

 また、閣僚・軍関係者もトランプ政権に唯唯諾諾と従うような従順な人間たちであるはずがないです。内務大臣のディオスダード・カベジョはアメリカが国際テロ組織として認定した、組織的誘拐などを行う「トレン・デ・アラグア」とつながりがあるといわれています。また政府や国軍内部にひろがる麻薬取引に手を染める人物の存在が「太陽カルテル」と呼ばれていますが、カベジョはその代表格と目されています。

 現体制は社会主義ではなく権威主義体制であり、反民主主義です。特にマドゥロ政権になってからの選挙は公正でないだけでなく、ノーベル平和賞を受賞したマリア・コリナ・マチャド氏などの有力な反政府派政治家を排除しマドゥロが勝つように仕組まれた茶番選挙を繰り返してきました。

ノーベル平和賞を受賞したマチャド氏(写真:ロイター/アフロ)

 経済政策は国家介入主義的で経済合理性がないため、石油を含めすべての産業分野が生産を縮小しました。2018年にインフレ率は13万%を超え、わずか7年で国内総生産(GDP)は5分の1にまで縮小するほど、経済破綻状況にあります。

 マドゥロ拘束で、長年我慢に我慢を重ねてきた国民は大喜びしていますが、体制側の弾圧が怖くて、それをアピールできない。先般ノーベル平和賞を受賞したマチャドに限らず、一般市民も抗議行動に参加したり、SNSなどで政権を批判する発言をしたりすると拘束される危険が高いです。

 現在、ベネズエラには反マドゥロの政治犯が850人ほどおり、先の大統領選後には、街角で抗議する市民が1カ月で1500人以上逮捕されました。その中には、未成年もいたほどです。

 実際、私の友人も「もうこれ以上、あなたにWhatsApp(SNSアプリ)で連絡できない。警察・軍隊が至る所で検問し、アプリのメッセージを読まれる。反政府的な発言が見つかるとどうなるか分からない」と話しています。

 マドゥロ拘束を受け、ベネズエラ国民は安堵していますが、現体制が簡単に民主主義への移行を決断するかは極めて不透明です。政権移行の今後を予想するのは難しいですが、少なくともロドリゲスがいきなり政治家・軍関係者を処罰できるとは思えないからです。

──米政権の今後の出方次第では、泥沼化する可能性もあると。