2013年にEUVが太陽系に突入してきた

 しかし、人間の努力というものは実に大したものである。世界中のリソグラフィ技術者たちが知恵を出し合い、数え切れない課題を一つ一つ克服していった結果、最大の難関であった光源出力さえ解決できれば、EUVの量産機は現実のものになるところまで到達した。

 そして2013年、EUVはついに「銀河系の彼方」から「太陽系に突入してきた」と表現される段階に至った(図4)。

図4 2013年、EUVが太陽系に突入してきた
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 この頃から、ASMLはEUVの試作機の出荷を本格化させた。その試作機を単なる研究装置にとどめず、量産技術へと昇華させたのが、ファウンドリーの王者であるTSMCである。TSMCは2016~2017年に出荷されたEUV試作機を用い、2018年には毎月約8万枚という規模でEUV露光の試行を重ねた。年間では約100万回に達する計算になるが、そのすべてのウエハは製品にはならず、最終的にスクラップとして廃棄された。

 こうした膨大な試行錯誤を経て、TSMCは2019年、7nm+プロセスにおいて、コンタクトホールなどの微細なパターン形成に約5層程度のEUVを量産適用することに成功した(図5)。世界がEUVの本格開発に着手した1997年から数えれば、実に20年以上の歳月を経て、ようやくEUVは量産技術として確立されたことになる。

図5 TSMCが2019年に7nm+にEUVを適用した
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EUVの普及と問題点

 その後、TSMCは2020年に、配線層にもEUVを適用した5nmプロセスの量産を開始した。この世代では、EUVの適用層数は約15層にまで増大している。EUVの導入はTSMCにとどまらず、サムスン電子や米インテルも最先端ロジックプロセスへのEUV適用を進め、TSMCを追随しようとしている。

 ただし、各社のEUV導入の道のりは平坦ではなかった。サムスン電子の場合、最先端ロジックの生産キャパシティがTSMCの10分の1以下と小さく、いきなりロジック製品にEUVを適用すれば、歩留まり低下によって全滅するリスクがあった。そこでサムスン電子は、月産50万枚以上の巨大なDRAM生産ラインの一部を月産約1万枚規模で活用し、合計で約30万回に及ぶEUV露光の試行を行ったとされる。これは、量産前にEUVプロセス使いこなすための、いわば実地訓練だった。