このほかにも、グリーンエネルギー活用などを条件とした環境配慮型のデータセンターの新設を認可したり、政府主導のスタートアップ向けコワーキングスペースなどを整備したりするなどして、ハブとなるためのインフラをハードとソフト両面で拡充している。
これらの施策を反映するように、昨年シンガポールはフランスのビジネススクールINSEADが実施した世界の人材獲得ランキングで、スイスを抑えて初の首位に立った。
シンガポールには、マナス以外にも動画SNSのTikTokを運営するByteDance(バイトダンス)、アリババ傘下の電子商取引(EC)大手Lazada(ラザダ)、ファストファッションとして日本でも知られるShein(シーイン)などが、既にグローバル本社を構えている。
米中対立を自国のチャンスに
マナス同様、当面は中国のAI企業が海外を目指そうとすれば、米中対立という緊張関係が大きな足かせとなる。両国の関係が早期に改善する見通しは低く、AI分野にかかわらず中国企業がシンガポールに拠点を移す動きは、増えていく可能性が高い。
マナスのように、中国企業が先進国、特に米国市場へアクセスしやすくするためにシンガポールへ本拠地を移す動きは「シンガポールウォッシング」とも呼ばれる。
中国色を薄めて提供する製品・サービスを世界で受け入れられやすくしたい中国発のスタートアップと、優秀なAI人材を呼び入れ、自国の技術力を高めたいシンガポールの利害は一致している。中国の台頭を警戒するトランプ政権が今後、シンガポールウォッシングへの監視を強める可能性はあるが、先行してこうした動きは広がっているものとみられる。