写真提供:DPA/共同通信イメージズ
生成AIをめぐる覇権争いは、米国が先行するものの中国が猛追し、差は急速に縮まっている。政府の後押しとDeepSeek(ディープシーク)の台頭により、性能やコスト面で米国を脅かす存在となり得るのか。AI開発の“超競争”を『世界のDXはどこまで進んでいるか』(新潮新書)の著者・雨宮寛二氏が解説する。
生成AIで米国を猛追する中国
今ほど、政治的・地政学的に複雑な時代はない。不確実性を伴う環境で対策を怠れば、世界に後れをとり、取り返しのつかない状況に陥る恐れがある事象が産業界には存在する。
人工知能(AI)の覇権を握る争いがそのひとつで、現在その競争は熾烈(しれつ)を極めている。AIは、1990年代初頭にサービス化されたインターネット以来、最大の「技術革新」と捉えることができ、人間が知り得る“経験”の全てを間違いなく変えていくことになる。
その覇権争いは、ChatGPTが近年急速に普及して、検索サービスにおけるゲームチェンジャーになったことから、生成AIの開発領域が主戦場となっている。
この領域で現在先頭を走るのは米国だが、2025年に入り中国が猛追している。その勢いは凄まじく、国家インターネット情報弁公室の集計によると、中国国内で登録された生成AIの大規模言語モデル(LLM)は、2025年6月末で累計439種類と、半年前(2024年12月末)に比べ45%も増えている。
その後押しをしているのが中国政府で、これまでさまざまな領域で産業を孵化(ふか)させてきたように、生成AIの領域においても、統制しながら開発を加速させる方針を明らかにしている。






