ファーウェイはトランプ政権が最も警戒する企業の一つだ(写真は7月26日、上海で開かれた「世界AIコンファレンス」の会場、写真:ロイター/アフロ)
トランプ米政権が9月下旬に発動した新たな輸出管理規則が、世界のハイテク業界に波紋を広げている。
米商務省の禁輸措置リスト「エンティティー・リスト」掲載企業が、株式の過半数を所有する子会社も規制対象に加えるもので、主に中国のハイテク企業を標的としている。
制裁の「抜け穴」をふさぐことが狙いだ。
だが、これにより米中の技術覇権争いを激化させ、世界のサプライチェーン(供給網)に混乱をもたらすとの懸念が広がっている。
制裁逃れの「抜け穴」を封鎖
新規則は、9月30日に即日発効した。エンティティー・リストに掲載された企業が、リストにない子会社を通じて米国の技術や製品を入手するケースが問題視されており、これを阻止するための措置だ。
ジェフリー・ケスラー米商務次官(産業安全保障担当)は、「あまりにも長い間、抜け穴が米国の安全保障と外交政策上の利益を損なう輸出を可能にしてきた」と述べ、規制強化の正当性を強調した。
この措置は、中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)のように、数多くの子会社や関連会社を持つ巨大ハイテク企業への圧力を強めることを意図している。
これにより、米国企業や米国の技術を用いた製品を供給する外国企業は、取引先が規制対象企業の子会社でないかを精査する必要に迫られる。
米法務事務所エイキン・ガンプのオファー・シュウェイキ氏は、「サプライチェーンへの影響が甚大になる可能性があり、企業が即座に完全なコンプライアンス体制を整備するのは困難だろう」と指摘。
企業の調査・管理コストの増大は避けられない見通しだ。
背景にAI開発競争と軍事利用への警戒
この強硬策の背景には、AI分野における米中の熾烈(しれつ)な開発競争がある。
米政権は、米国の高性能半導体やソフトウエアが、中国のAI技術の進展、ひいては軍事力近代化に貢献することに強い警戒感を抱いてきた。
この動きは、今年3月の規制強化の延長線上にある。
このときトランプ政権は、中国最大のサーバーメーカーや浪潮集団(インスパー)の子会社、スーパーコンピューター大手の曙光信息産業の関連会社など、50以上の中国企業をエンティティー・リストに追加した。
これらは、軍事目的のAIやスパコン開発に関与しているとされ、先端技術の軍事転用を阻止するという政権の断固たる姿勢を示したものだった。