台湾のTSMCによる1000億ドルの対米投資を発表したトランプ大統領。左はTSMCの魏哲家CEO(最高経営責任者)、3月3日ホワイトハウスで撮影、写真:UPI/アフロ
9月下旬、米トランプ政権が半導体の国内サプライチェーン(供給網)を強化するため、新たな輸入抑制策を検討していると報じられ、世界のハイテク業界に波紋が広がっている。
米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)などが報じた計画の核心は、半導体メーカーに対し、米国内での製造量と、その顧客による輸入量を「1対1」に維持するよう義務付ける点にある。
達成できない場合は高い関税を課すとしており、補助金中心だった従来の国内回帰策から、より強制力を伴う政策へと踏み出す可能性が浮上している。
狙いは「経済安保」と供給網の再構築
トランプ政権がこの新方針を検討する背景には、長年の懸案である半導体の海外依存、特に地政学的リスクを抱える台湾への過度な依存に対する強い危機感がある。
半導体はスマートフォンから自動車、最新兵器に至るまで、現代社会を支えるあらゆる製品に不可欠な「産業のコメ」となって久しい。
ホワイトハウスのクシュ・デサイ報道官は「国家および経済の安全保障に不可欠な半導体製品を、外国からの輸入に依存することはできない」と述べ、供給網の脆弱性が国家の安全保障を揺がしかねないとの認識を示した。
米政府は、2022年の「CHIPS・科学法(CHIPS and Science Act of 2022)」によって、国内外のメーカーに巨額の補助金を投じ、米国内工場の建設を促してきた。
しかし、製造コストの差から、顧客であるハイテク企業は依然として安価な海外製品を優先する傾向が強い。
補助金効果だけでは供給網の抜本的な転換には至らないとの判断が、今回の「アメとムチ」を使い分ける新たな政策の検討につながったとみられる。